<52年ぶり春・宮崎商>秋季大会回顧/下 悔しさ糧に実戦意識 /宮崎
中村碧人主将のバットが力なく空を切った。三球三振。昨秋の九州地区高校野球大会準決勝の福岡大大濠戦。チーム無安打で迎えた宮崎商六回2死二塁の好機。「お前が一番練習してる。自信を持ってやれ」と送り出された打席だった。橋口光朗監督は「思い切りいけ」と選手に声を掛け、九回の攻撃前は「あきらめるな」と鼓舞し続けた。しかし、打てなかった。0―2という点数以上に「全国」との差を突きつけられた。 九州大会は10月31日~11月6日、各県上位2チームの計16校が長崎県内2球場で戦った。宮崎商の準々決勝までの2試合は投打がかみ合った。「(6試合戦った県予選の)7回戦として臨もう」と橋口監督が声をかけ臨んだ初戦・長崎日大戦。アウェーの雰囲気をもろともせず、二回無死満塁で打席に立った日高大空投手が初球を捉え先制。打で投の流れをつかみ、8―1の七回コールドで好発進した。 続く準々決勝の東明館(佐賀)戦は西原太一、中村両選手が本塁打。中村選手は2本目の本塁打も放ち9―3。センバツへ前進した。 しかし福岡大大濠戦では快音は響かなかった。相手は想定していた主戦左腕ではなく情報の少ない1年生右腕。初回から四球で好機は作ったが、変則フォームから投じられる変化球にタイミングが合わなかった。「0―6でもひっくり返せる」自信のあった打線だったが、たった1安打。2点のビハインドが重かった。渡辺龍樹選手は「(三、八回での好機に)俺が打っていたら」と涙があふれて止まらなかった。橋口監督は「野球の神様が春に向け与えてくれた試練だったのかもしれない」と振り返る。 あれから3カ月。「自分たちのリズムで優位に進められない時どうするか」にチームは向き合ってきた。全国の好投手を想定し、下半身を強化し、左右投手を見据えたティーバッティングをするなど実戦を強く意識する練習に変えた。渡辺選手は「二度と涙は流したくない」。悔しさを糧にセンバツに向かう。【塩月由香】