増える「故郷」を知らない子どもたち ロヒンギャ難民キャンプはいま
バングラデシュ南東部コックスバザールから車で1時間。約100万人がひしめく「世界最大の難民キャンプ」には、山あいにへばりつくようにシートや木でできた家屋が広がっていた。店が並ぶ表通りは人で埋め尽くされている。 【写真】村で戦闘、6歳の息子失ったロヒンギャの家族「小さな体が…」 迫害を逃れ、国境を越えてきたミャンマーの少数派イスラム教徒、ロヒンギャの人々が身を寄せる。11月下旬、バングラデシュ当局の取材許可を得て現地を訪ねた。 「授業を始めるよ!」 小さな教室でアジズ・カーンさん(25)が児童らと向き合っていた。英NGOが運営する学校で、約100人が通う。 ロヒンギャは多くがミャンマー西部ラカイン州で暮らしてきた。だが大半が仏教徒の国で「不法移民」とされ、国籍や教育機会、移動の自由も奪われた。 2017年、ロヒンギャの武装組織が警察などを攻撃したとして、ミャンマー国軍がロヒンギャ掃討作戦を実行。「村が焼かれ、女性や子どもも無差別に殺された」とカーンさんは振り返る。国際NGO「国境なき医師団」によると、少なくとも6700人が死亡。70万人以上がバングラデシュに逃れた。 7年が経ち、キャンプで生まれた子も増えた。彼らは「故郷」を知らない。「私たちがどこから来たかを教え、世代を超えて伝えていくことが重要です」 バングラデシュ政府はロヒンギャの定住を認めず、ミャンマーへの帰還を前提とする。だがラカイン州では昨年11月、国軍と少数民族武装勢力「アラカン軍(AA)」の戦闘が再燃。ロヒンギャはミャンマー国籍を持てないのに国軍に徴兵されたり、AAの攻撃の犠牲になったりする例が相次いだ。バングラデシュに渡る難民は再び増え、同国当局によると、今春以降少なくとも6万5千人が流入したという。
朝日新聞社