「トークン」が次の金融イノベーションをリードする理由
ニッチな商品と見なされたETF
ETFは当初、ニッチな商品と見なされていた。DIY投資家(投資アドバイスを受けずに自身の判断で投資する人)には適しているかもしれないが、投資アドバイザー、トレーダー、機関投資家、富裕層など、ウォール街の主要プレーヤーには適していないと思われていた。 確かにETFは当初はインデックスファンドとしてスタートしたが、現在ではほとんどのETFはアクティブ戦略向けにローンチされている。世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)によると、2023年に米国上場されたETFの76%はアクティブETFであり、同年のETFへのグローバルな資金流入の21%を占めた。 同社は、アクティブETFの運用資産残高は2030年までに4兆ドルに増加する予想している。現在の9000億ドルから4倍以上の増加だ。
イノベーションのジレンマ
ETF市場の成功は、クレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』の好例だ。新しいテクノロジーが台頭すると、既存企業(この場合は従来の資産運用会社、銀行、証券会社)はそれを受け入れるのに時間がかかり、破壊的イノベーターが大きな先行者利益を得ることをしばしば許してしまう。 既存企業のポジションは理解できるとクリステンセン氏は記している。投資の世界では、小規模なDIY投資家は当初、彼らにとって最も関心を引かない顧客層だった。投資金額が少なく、手数料に敏感なDIY投資家は、簡単に切り捨てられる存在だった。 だがその見方は短絡的だった。既存企業は、ETF(およびオンライン証券)といった技術イノベーションがDIY投資家を成長させる可能性を見誤った。またETFが幅広い層にアピールできるとは考えなかった。 クリステンセン氏は、存在しない市場は分析できないと述べている。ETFは、それまで存在しなかった10兆ドルの市場を生み出した。新興市場が古い市場を駆逐した。
金融を民主化するトークンの可能性
トークンは、ETFと同様に、金融をさらに民主化する可能性を秘めている。 トークンに関しては、神話や誤った情報が氾濫している。多くの場合、すべてのトークンは「暗号資産」として分類されている。これは不幸なことだ。なぜなら「暗号資産」という用語は誤解を招きやすいからだ。 実際には、ほとんどではないにせよ、多くのトークンは、交換手段、価値の保存、価値の尺度という古典的な意味での「通貨」を目指しているわけではない。むしろ、トークンはシンプルに価値の入れ物と考えることが最も適切だ。標準的な輸送コンテナを考えてみよう。コンテナには、コンピューターから自動車部品、ジャガイモ、プラムの缶詰まで、ありとあらゆるものを入れることができる。 これらのプログラム可能なコンテナは、株式、債券、アート、知的財産など、あらゆる価値を表すことができる。これは、ウェブサイトが店舗、ソーシャルメディア、政府のランディングページなど、オンライン上のあらゆる情報をプログラムによって表示できることと同じようなことだ。 トークンはまた、インターネットに接続できる環境があれば世界中の誰もがアクセスでき、従来の仲介者を不要なものにする。スマートコントラクトのような組み込み技術は、かつては証券会社、取引所などが担っていた機能を自動化し、手間と手数料を削減する。 トークンにとっての最初のキラーアプリは、これまでのところ、米ドルだ。トークン化されたドルは「ステーブルコイン」と呼ばれ、ユーザーに価値をドルで移動し、保存する能力を提供する。そしてユーザーは、ドルを証券取引、貸付プラットフォームへの預け入れによる融資、新規スタートアップへの投資など、幅広い金融サービスに活用できる。 現在、ステーブルコインの流通高は1500億ドルを超え、年間で何兆ドルもの決済が行われている。数十億の人々が、ドルを所有する簡単な方法を手に入れた。これは画期的なことだ。