職安で探した「水産会社」、年収は1000万円を超えて…すしざんまい社長が司法試験を諦めた理由
全国的に知られるすしチェーン「すしざんまい」を展開する「喜代村」社長の木村清さん(72)。不慮の事故でパイロットの夢を断たれた木村さんは、航空自衛隊を退官し、一念発起(いちねんほっき)して司法試験合格をめざす。(読売中高生新聞編集室 鈴木経史)
「中央大学法学部の通信教育課程で学びながら司法試験を目指していたんですが、困ったのはお金です。授業料などはひとまず自衛隊の退職金で支払いましたが、法律の勉強のためにはたくさんの専門書を読まなければなりません。その本を買うお金がなくて困ってしまったのです。
実は自衛隊を辞めた直後、株でもうけて200万円という大金を手に入れました。ただ、そのお金は知人に頼まれて貸したっきり、返ってきませんでした…。それは悔しかったけれど、泣きごとを言っても仕方がありません。勉強は図書館で借りた本で続けるしかありませんでした」
困難を抱えながら司法試験の勉強を続ける一方、自衛隊を辞めてしまった以上、生活のためには働かなければならなかった。
「食べていくために色んな仕事をしました。そのなかでも印象に残っているのが百科事典の訪問販売です。売れた数だけ収入が増える歩合制だったのですが、最初は全く売れませんでした。1日600軒くらい訪問して、3日で靴底に穴が開くほど歩いたのに全滅。心が折れかけて公園で百科事典を広げて眺(なが)めていたら、遊んでいた子どもたちが集まってきました。売る気もなく事典を読み聞かせていたら、次から次に質問をしてきます。その様子を見ていたひとりのお母さんが『これはためになる』と、1セット買ってくれたんです。口コミが広まり、翌日以降は次から次へと注文が入るようになりました。
現在の業界に入るきっかけになったのもこの頃です。職業安定所で仕事を探していたとき、水産会社を紹介されました。幼い頃に2切れのマグロを家族4人で分け合った思い出がよみがえり、入社することにしたんです。20代になってすぐの頃でした。