竜星涼&八木莉可子『潜入兄妹』大ヒットした『地面師たち』『ラストマイル』の要素もあって「これが無料ならおトク」感満載
地上波テレビという無料コンテンツでこの作品が観られるのは、けっこうおトクかもしれない。 10月12日(土)に第2話が放送された『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系)。竜星涼と八木莉可子が兄妹役としてダブル主演を務める潜入サスペンスドラマだ。 2人の父親は、巨大詐欺組織「幻獣」に潜入捜査していたが、警察官だとバレてボス・鳳凰に殺されてしまう。5年後、自身も警察官だったが、父の死をきっかけに辞職していた兄・貴一と、天才ホワイトハッカーとなった妹・優貴が、父を殺したボスに復讐するため、警察のバックアップのもと「幻獣」に潜入していく。 ■『潜入兄妹』の “『地面師たち』味” とは? 第1話では、闇バイトの募集から「幻獣」入りを認められるための採用テストに兄妹で挑み、仕掛けられていたトラップを見抜いて、みごと合格するところまでが描かれた。 第2話では「幻獣」の四天王的ポジションの幹部・玄武から疑われ、3日以内に5000万円稼がなければ組織の末端メンバーともども全員殺すという試練を与えられる。貴一はネット宝くじのプログラマーを脅し、当選金6億円を騙し取ろうとするも、別のやり手詐欺師に計画を知られてしまい、分け前として3億円をよこせと脅され――という展開だった。 第2話のネタバレになるが、実は兄妹には「騙すのは汚いカネでのうのうと生きている悪人だけ」というポリシーがあり、プログラマーを騙すというのはフェイクで、最初からやり手詐欺師がターゲット。その詐欺師が貯め込んでいるカネから1億円騙し取る計画がみごと成功。 第2話は二重構造の犯罪エンターテインメントだったわけだが、兄妹と組織末端メンバーの計7人による綿密なチームプレイで、やり手詐欺師をハメていく過程はスリリングで見応えあり。 今夏大ヒットしたNetflixオリジナルドラマ『地面師たち』を彷彿とさせた。 地面師集団も主要メンバーが5人で、そこにサポートとして加わるキャラが2人いたためチームの規模感は同じ。そのチームによる詐欺計画が、ターゲットにバレるかバレないかという綱渡りのヒリヒリした空気感が醍醐味だったが、『潜入兄妹』第2話では似たような空気感を満喫できた。 忌憚なく言うと、『地面師たち』に比べれば『潜入兄妹』はチープ感があり、“下位互換” という印象もあった。ただ、Netflixという有料コンテンツ作品と似たようなエンタメを、無料で楽しめるのだから満足度は決して低くない。 むしろ、『地面師たち』は過激な暴力描写や性描写があり、レーティングは16歳以上なので、『潜入兄妹』は子どもと一緒に楽しめるライトなクライムサスペンスとしての価値は高い。 ちなみに『地面師たち』がいくら大ヒットしたとはいえ、10月期ドラマが7月下旬から配信開始された作品をマネるのは難しいだろうから、『潜入兄妹』はたまたま似てしまっただけだろう。 ムーブメントを巻き起こした『地面師たち』と似たストーリーになったのは、『潜入兄妹』の制作陣もヒットへの感度や嗅覚が高いと言えるかもしれない。 ■『潜入兄妹』の “『ラストマイル』味” とは? ちなみに『潜入兄妹』は、今夏もうひとつの大ヒット有料コンテンツである映画『ラストマイル』と同じ “おいしい要素” も取り入れている。 8月下旬に公開された『ラストマイル』は、2018年のドラマ『アンナチュラル』、2020年のドラマ『MIU404』(ともにTBS系)と同じ世界観を舞台にした物語。ドラマ2作品の主人公や仲間たちが『ラストマイル』にも登場することで、大きな話題を集めた。 一方の『潜入兄妹』は、2023年のドラマ『大病院占拠』、今年1月期の続編ドラマ『新空港占拠』(ともに日本テレビ系)の制作陣が再集結した作品で、この2作品と同じ世界観を舞台にしていることが第1話で匂わされた。 芸人・ぐんぴぃが演じていた両作のレギュラーキャラの情報分析官が『潜入兄妹』にも登場したからだ。 さらに第2話では、「幻獣」の幹部・朱雀を白石聖が演じていることが明かされたが、白石は『新空港占拠』で犯罪集団の一員役で出演していた女優。『新空港占拠』と『潜入兄妹』で白石が演じているキャラが同一人物だとは明示されていないが、その可能性は非常に高いだろう。 そう考えると、櫻井翔が演じた『大病院占拠』『新空港占拠』の主人公や、菊池風磨が演じた両作の重要キャラが『潜入兄妹』に登場することもありえそうだ。このように、『潜入兄妹』は映画『ラストマイル』のような楽しみ方もできそうだ。 これも余談だが、『ラストマイル』は8月下旬公開なので、作品の構造が似たのは偶然だろう。 いずれにしても、『地面師たち』と『ラストマイル』という、大ヒット有料コンテンツと同じような旨味を持った『潜入兄妹』が、無料の地上波ドラマで観られるわけだ。これは “おトク” 感満載といって間違いない。 今夜放送の第3話も期待したい。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中