「川崎病の薬が足りない」副院長は焦った 放置すれば子どもたちを治療できない 対策の決め手は「献血」だが…
▽「使用量が10年で1・5倍に」原因は 免疫グロブリンが不足している大きな要因は「適用疾患の拡大」とされている。 近年、神経疾患のギラン・バレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)など、幅広く治療に使われるようになった。厚生労働省研究班の調査では、国内の使用量は2010年からの10年間で1・5倍に急増。成人の治療では、濃度の高い製剤が継続的に必要になることもあり、需要増の一因となっている。 血液製剤の難しさは、簡単に輸入に頼れないところにある。 国は血液法により、血液製剤の国内自給を基本理念としている。免疫グロブリン製剤もこれまでほぼ国内自給を達成していたが、2019年には使用量急増に生産が追いつかず、緊急輸入を実施した。その後、状況はいったん落ち着いたが、2023年春ごろから新型コロナウイルスの制限緩和で受診控えが減ったことが影響し、再び需要が急増。国内販売する全4社の製剤が限定出荷となり、医療現場にも影響が出始めた。厚労省によると、血液製剤を製造できる国内企業が限られ、急な増産が難しい。2023年12月、厚労省は23年度中の輸入量を1・4倍に増やすと計画変更した。
患者側にも動揺が広がっている。「川崎病の子供をもつ親の会」の浅井幸子代表によると「製剤を投与してもらえなかったが後遺症は大丈夫だろうか」「年明けまで在庫がないと言われた」などの相談が数件あった。浅井代表は患者や家族の気持ちをこう語る。 「薬がないと言われると親はパニックになる。早く供給が安定してほしい」 日本川崎病学会も、病院内の診療科で製剤を融通し合うなどして治療環境を維持するよう、2023年10月に注意喚起の声明を出した。高橋啓理事長は、今後大量購入などで在庫を抱え込む病院があれば、製剤が行き渡らない病院や地域が出てしまうと心配する。「製剤の不均衡が起きないよう学会としても状況を注視したい」 ▽献血が重要、でも若い世代で減少 一方で、輸入量を増やせば解決するわけではなさそうだ。厚生労働省研究班によると、免疫グロブリンの不足は世界で深刻化している。欧州は、血液の成分である血漿の輸入の多くを米国からの輸入に頼っていたが、国内自給政策に力を入れ始めている。また、オーストラリアやカナダなどでも、血漿の世界的不足による価格高騰を懸念し、製剤の適正使用や国内自給体制の構築を急いでいるという。