「川崎病の薬が足りない」副院長は焦った 放置すれば子どもたちを治療できない 対策の決め手は「献血」だが…
東京・多摩地域で小児医療の中核となっている東京都立小児総合医療センター。年間、約100人の川崎病患者を診療している。心臓に冠動脈瘤ができると心筋梗塞につながる恐れがある病気で、治療の鍵は早期の診断と血液製剤「免疫グロブリン製剤」の投与だ。 免疫グロブリン製剤が不足、治療に支障
昨年夏ごろ、副院長の三浦大さんの元へ、こんな連絡が届き始めた。 「免疫グロブリンが足りない」 病院によっては、薬が不足して治療できないところが出始めていた。このためセンターでは数人の川崎病患者の転院を受け入れた。日本川崎病学会も医療機関の連携強化を求める声明を発出。それを受けた三浦さんが昨年11月に調査を実施すると、関東4都県の29病院のうち、6病院では製剤不足による転院例があるなど、治療に支障が出ていることが分かった。 川崎病治療の命綱ともいえる免疫グロブリンが不足している。しかも、国内だけでなく、世界的に足りないという。医療の現場で何が起きているのか。そして、対策はあるのか。(共同通信=細川このみ) ▽「薬の追加投与を調整」 川崎病は全身の血管に炎症が起きてさまざまな症状が出る病気で、原因は分かっていない。主な症状は38度以上の高熱、両目の充血、イチゴに似た舌の腫れ、発疹などだ。4歳児以下での発症が多く、患者数は2019年には約1万7千人と過去最多水準だったが、新型コロナウイルスの影響を受けてか、22年は約1万人だった。
治療に使われる免疫グロブリンは、人の血液から作り出された医薬品で、「血漿分画製剤」と呼ばれる血液製剤の一つ。川崎病の急性期治療のほか、重症感染症や免疫機能低下の際に使われる。 免疫グロブリンの不足を受け、三浦さんは対応に追われた。 薬の調達を担当する薬剤科に掛け合い、常にグロブリン製剤の在庫をモニタリングするようになった。以前は、製剤を投与しても十分な効果が見えない患者には追加投与する例が多かったが、7月からは別の薬に変えるなどして対応。 今後、さらに不足が深刻化した場合は、重症度に応じて投与量を調整することも考えられるという。 三浦さんが調査した結果、東京、神奈川、栃木、埼玉の29病院のうち、製剤不足に関する患者対応について「他に転院させたことがある」(6病院)、「転院を受けたことがある」(10病院)、「今後、転院の可能性がある」(7病院)などの回答が寄せられた。 三浦さんは連携の必要性を指摘する。「医療機関における製剤の適正使用と、地域の病院同士の連携が重要になっている」