増えるパーキンソン病、謎多き原因や治療法に進展続々、ついに研究の黄金期が到来
原因は? かかるリスクの高い人は?
ニューロンの減少がパーキンソン病で何らかの役割を果たしていることや、特定の遺伝子の変異がパーキンソン病と関連していることは分かっている。 しかし、決定的な原因は依然として不明だ。患者の90%は、パーキンソン病になりやすいことが知られている遺伝子を持っていない。男性は女性よりも若干リスクが高いことが研究により示されているが(編注:日本では患者は女性の方が多い)、米国立衛生研究所(NIH)によると、「事実上、誰でもパーキンソン病になるリスクがありうる」という。 ベック氏は、「家族にパーキンソン病患者がいる人は、自分もパーキンソン病になるのではないかと心配になるかもしれません」と言う。「たしかにリスクは高くなります。家族に患者がいない人の2倍です」。しかし、リスクのある人が全員発症するわけではないと氏は言う。 パーキンソン病の患者数についての調査も進められている。診断の遅れや誤診は珍しくないため、推定するのは難しい。しかし、パーキンソン財団などが資金を提供した最近の研究によると、米国だけでも現在約100万人のパーキンソン病患者がいるという(編注:厚生労働省の「令和2年患者調査」によると、日本では28万9000人)。 パーキンソン病にかかっている米国人の割合は40年前の2倍であり、研究者らは、主に高齢者人口の増加により、米国の患者数が2030年までに120万人以上に増えると予測している。世界保健機関(WHO)によると、世界には現在パーキンソン病と診断されている人が約850万人いるという。
治療法は?
パーキンソン病の症状には個人差があり、根本的な治療法はないため、治療は対症療法に限られる。最もよく使われている薬は「レボドパ」で、パーキンソン病の主な運動症状のいくつかを改善するために用いられる。 他の治療法としては、理学療法、作業療法、言語療法、脳深部刺激療法(DBS)などがある。DBSは、手術で脳に電極を埋め込んで患部を刺激し、ふるえなどの症状を軽減する治療法だ。 とはいえ世界では神経科医が不足していて、高所得国と低・中所得国ではパーキンソン病の診断と治療に格差がある。米国内でも、人種的・民族的マイノリティーはパーキンソン病と診断されるタイミングが遅く、治療薬を入手しにくいことが研究で示されている。