増えるパーキンソン病、謎多き原因や治療法に進展続々、ついに研究の黄金期が到来
どこまで解明されている?
研究者とパーキンソン病との闘いは続いている。毎年、パーキンソン病の診断、遺伝学、治療法に関して、患者の生活の質を改善する新たな進歩が報告されている。 そして今、パーキンソン病研究は黄金期を迎えようとしている。「αシヌクレイン」というタンパク質の異常が、ニューロンを損傷しておそらくパーキンソン病の症状を引き起こしているようなのだ。2023年には、パーキンソン病のバイオマーカー(生物学的指標)として、このタンパク質の異常が使える可能性を示す研究も発表された。ただし、いわゆるこの「パーキンソン病タンパク質」が体内でどのように働いているのかについては、まだ疑問が残っている。 研究者は現在、2024年6月に医学誌「British Journal of General Practice」に発表された50歳以上の不安症との関連を示した研究から、匂いによってパーキンソン病を見つける研究まで、あらゆる角度からパーキンソン病の解明に取り組んでいる。 2024年4月に医学誌「The New England Journal of Medicine」に発表された別の研究では、糖尿病の治療に使われる注射薬の「リキシセナチド」を投与したパーキンソン病患者は、プラセボ(偽薬)を投与した患者に比べて運動症状の進行が遅かったことが示された。リキシセナチドは、インスリンの分泌を促し、血糖値を下げる薬だ。 支援活動も続いている。ここ数十年、マイケル・J・フォックス氏、故モハメド・アリ氏、リンダ・ロンシュタット氏などの有名人がパーキンソン病と診断されたことで、この疾患は大きな注目を浴びている。パーキンソン病の研究には、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)が2022年だけで2億5900万ドル(約411億円)の資金を提供しているほか、世界中の支援団体や患者グループからの資金も提供されている。 パーキンソン病は今でもジェームズ・パーキンソンの時代と同じように厄介な病気かもしれないが、現在進められている研究と認知度の高さのおかげで、そんな時代はまもなく終わるかもしれない。 「まだそこには到達していませんが、前進はしています」とベック氏は言う。
文=Erin Blakemore/訳=三枝小夜子