夫が亡くなり、52歳で「遺族年金」を受け取っています。今後「5年で打ち切り」になると、途中から“支給なし”になるのでしょうか…?
改正案の概要
改正案の概要は、女性の就業の進展や共働き世帯の増加など社会の変化への対応、制度上の男女差解消の観点で、主に「60歳未満で死別した、子のない配偶者」に対する遺族厚生年金を見直すものです。 ・「60歳未満で死別した、子のない配偶者」について、妻の5年給付対象年齢を「30歳未満」から「60歳未満」に段階的に引き上げ、新たに「60歳未満の夫」を5年給付の対象とする(60歳未満男女一律5年給付化) ・「60歳未満で死別した、子のある配偶者」「60歳以上の配偶者」「施行日前に受給権が発生している人」については現行制度を維持し、見直さない これら以外にも、男女差の解消や、親の事情で遺族基礎年金を受け取れない子の救済案も検討されています。 ・遺族厚生年金の「中高齢寡婦加算」と国民年金の「寡婦年金」を段階的に廃止する ・国民年金の「死亡一時金」の額を葬祭費用の変化に合わせて見直す ・子に対する遺族基礎年金の支給停止規定を見直す(離婚した元配偶者に子が引き取られた場合や、遺族基礎年金を受け取っていた配偶者が再婚した場合などに、遺族基礎年金が支給停止されないよう見直す) ■検討中の配慮措置 次の配慮措置も検討されています。 ・「死亡時分割」の創設(離婚時分割を参考に婚姻期間中の標準報酬などを分割) ・生計維持要件のうち収入要件(年収850万円)の廃止 ・「有期給付加算」の創設
案どおりに法改正された場合のプラス面、マイナス面
2024年7月末現在の案どおりに法改正された場合のプラス面、マイナス面は次のとおりです。 ・「夫」は「55歳以上の夫」しか遺族厚生年金を受け取れなかったが、施行日からは、「60歳未満の夫」が5年間受け取れるようになる。55歳以上の夫への終身給付はなくなるものの、「夫」全体としては受け取れる人が増え、保障が手厚くなる ・「30歳未満で子のない妻」への5年給付の年齢基準は、施行日に「40歳未満」に引き上げられ、その後20年かけて段階的に「60歳未満」まで引き上げられる(20年後に男女差が解消される)。 つまり、現行制度では終身で受け取れる「30歳以上の妻」は、世代ごとに5年給付の適用が進むことになる。この「60歳未満男女一律5年給付化」に関しては、現在おおむね40歳未満の女性が法改正の影響を受け、「妻」全体としては受け取れる総額が減り、保障が薄くなる。 男女とも、結果としてプラスの影響を受ける人とマイナスの影響を受ける人の両方が出てきますが、夫婦全体における「男女差」「年齢差」問題は解消します。給付する側(国)から見た場合も、年金給付が増えるマイナス面と減るプラス面の両面があり、年金財政の全体に与える影響はプラスともマイナスとも評価しにくいようです。