夫が亡くなり、52歳で「遺族年金」を受け取っています。今後「5年で打ち切り」になると、途中から“支給なし”になるのでしょうか…?
会社員や会社員だった人などが亡くなると遺族が受け取れる「遺族厚生年金」制度。その制度の見直しが進んでいます。2024年末までに改正法案がまとめられる見込みですが、「現在受給中の人も途中で打ち切りになるのか」「経過措置はあるのか」などを心配する人もいるようです。 本記事では、2024年7月末時点の公開情報を基に、改正案の要点を解説します。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
遺族厚生年金の概要
はじめに遺族厚生年金の概要を紹介します。 ■支給要件 遺族厚生年金は、亡くなった人が次のいずれかに該当すると支給されます。 ・厚生年金保険加入中に死亡 ・厚生年金保険加入中に初診日のある病気またはけがが原因で初診日から5年以内に死亡 ・障害厚生年金(1級または2級)の受給者が死亡 ・老齢厚生年金の受給者または受給開始を待っている人が死亡(加入期間などが25年以上あること) ■年金額 遺族厚生年金の額は「亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3」です(受け取る人自身の老齢厚生年金との調整や、加入期間25年未満で亡くなった場合の計算方法などは割愛します)。 ■支給対象者 亡くなった人に「生計を維持されていた」遺族のうち次の優先順位で支給されます。 ・子のある配偶者、子(この第1順位のみ、遺族基礎年金も支給されます) ・子のない配偶者 ・父母 ・孫 ・祖父母 注意点は次のとおりです。 ・「子」は「18歳になった年度の3月31日までの未婚の子」「20歳未満で障害等級1級または2級の状態の未婚の子」に限られる ・「配偶者」のうち「夫の死亡時に30歳未満の子のない妻」は5年間の有期給付 ・「配偶者」のうち夫は「妻の死亡当時55歳以上の夫」に限られ、支給開始は原則60歳から ・「父母、祖父母」は「死亡当時55歳以上の父母、祖父母」に限られ、支給開始は60歳から
受け取る配偶者の「男女差」と「年齢差」
現行制度が始まった1980年代(昭和の末期)は、夫婦世帯の半数以上が専業主婦世帯であり、夫と死別した妻が働いて生計を立て直すことは難しい時代でした。 その後、社会の変化とともに、遺族厚生年金を受け取る人が配偶者の場合の「男女差」と「年齢差」が問題視されるようになってきました。男女差と年齢差は次のように整理できます。 ・夫の死亡時点で妻が30歳以上の場合、妻は(再婚などをしない限り)終身で受け取れる ・妻の死亡時点で夫が55歳以上の場合、夫は原則60歳から(再婚などをしない限り)終身で受け取れる ・妻の死亡時点で夫が55歳未満の場合、夫は一切受け取れない(子がいる場合、子が受け取る) 30歳未満の妻はさらに複雑です。 ・夫の死亡時点で妻が30歳未満で子がいない場合、妻は(再婚などをしない限り)5年間だけ受け取れる ・夫の死亡時点で妻が30歳未満で子がいる場合、妻は(再婚などをしない限り)受け取りを開始する。30歳到達前に要件を満たす子がいなくなった場合は、子がいなくなったときから5年間で給付が終わる