邦人人質事件への日本政府の対応をどう見るか? 黒木英充、高橋和夫、萱野稔人らが議論(5)
交渉はできたのか?
萱野:この辺りの日本政府の対応に関して、高橋さんはどのように評価されてますか。 高橋:評価はしてないですね。結局、2人は亡くなったわけですから、評価はできないですよね。ただ、日本政府は今回はおそらく、人質の身代金は支払わないという方針を選択したんだと思うんですよね。その結果、交渉も動かないしと、こういう結果を招いたんですね。で、それがやっぱり、いいことなのかどうかっていうのは、もうそれは国民が決めることですよね。200億じゃないにしても20億だったら良かったのかとかね。 萱野:最初、それくらいの額だって言われてましたよね。 高橋:ええ。で、平均が2億7,000万って言われてますから、中東のバザールでカーペットを買う、値切って、値切って1割になると、3億円ぐらいでそれが妥当ということで払うべきだったのかというのは、それは国民が考えることですよね。で、もし払ったとしたら、また次に日本人が人質に取られやすくなるというもの事実ですよね。ですから、アメリカの人質は殺されてますけども、あれだけ中東でアメリカ人が活動してて、アメリカ人の人質の数は非常に少ないですよね。だから、ヨーロッパ人は捕まえればお金になるからって捕まえにきますよね。だから、どちらを選ぶのかということで、それは国民が決めることなんですけど、ただもう1つはやっぱり、指導者が私はこういう政策でいきたいということを、もう少し国民に切々と直接に訴えていただきたいなと思うんですね。もう人質もこの問題、悲劇的な形で決着しましたから、もう総理が直接国民に本音を語ってもいいころかなと思うんですけどね。 萱野:なるほど。アメリカのほうが人質で身代金払ってないから、人質にされる人の数がやっぱり少ないんですか。 高橋:ええ。圧倒的に少ないんですね。 萱野:ああ、そうですか。 高橋:うん。それも、アメリカ、イギリスから日本に対して、ヨーロッパ諸国に対して強い要請があったわけですよ。あなたが払うのはいいけど、そしたらまた人質は取られると。で、イスラム国はそのお金でまた悪いことをするじゃないかと、いい加減にしろというのがアメリカ、イギリスの立場で、で、国際公約として日本は交渉しないという立場に傾きつつあったわけですね。で、今回のケースがその最初の例になると思うんですね。で、これまでは政府はもちろん人質の身代金払うとは言ってませんけど、基本的には日本人が捕まった場合は、もう白紙の小切手を渡していくらでも書いてくださいというのが日本の対応だと思われてたわけですよね。 萱野:それを踏まえて高橋さんはどちらが良かったと思います? 払うべきか、払わなかったべきか、払うべきではなかったか。 高橋:僕は額によると思いますね。 萱野:額によっては、じゃあ、払っても良かったんじゃないかと。 高橋:うん。200億は高いですけどね。 萱野:そこは表面化する前に、秘密裏に交渉が成立するなら、そちらのほうが良かったんじゃないかということですね。 高橋:うん、そうですね。アメリカに対してはもちろん言い訳が必要ですけどね。アメリカだって、人質を例えばレバノンでアメリカ人のCIAの要員が取られたときは、イランに頼み込んで、イランに武器を渡して、解放、釈放してもらったこともあるんで、それはやっぱり議論はできたと思いますね。