邦人人質事件への日本政府の対応をどう見るか? 黒木英充、高橋和夫、萱野稔人らが議論(5)
THE PAGE
THE PAGEが放送したTHE PAGE 生トーク「中東とどう向き合うか~イスラム国から日本外交まで~」。出演は、黒木英充・東京外国語大学教授、鈴木恵美・早稲田大学イスラーム地域研究機構招聘研究員、高橋和夫・放送大学教授。司会・進行は、萱野稔人・津田塾大学教授、春香クリスティーンさん。 以下、議論の第5部「中東と日本 人質事件が残したもの」を議論した部分の書き起こしをお届けします。 ※討論の動画は本ページ内の動画プレイヤーでご覧頂けます。
日本政府にできることは限られていた
(以下、書き起こし) 萱野:最後のテーマにもなりますけれども、日本と中東の関係をどう考えたらいいか。あるいは、日本はどう中東に関わっていけばいいのかっていうことを、また最後にお伺いしていきたいなと思いますけれども、まずはそうですね。鈴木さん。人質問題で安倍政権の対応っていうのは良かったのか、悪かったのか。どのように評価されてます? 鈴木:いや、もういいも悪いも日本政府ができることは限られてるとは思うんですけれども、よく安倍首相が中東に行ったからだっていうようなことを言う、そういう意見もありますけども、私の意見としては、もう人質を取られた時点でやっぱりもうかなりアウトだったと思います。何かのきっかけでこの人質2人を使うというふうにたぶん、考えてたと思うんですよね。それがたまたまやっぱり安倍首相が来たときに、うまくそれが使われてしまったということだと思うんですよね。 なので、安倍首相が中東に行ったからとかいうことではないと思います。もう人質を取られた時点でもうかなり厳しかったと。そのぐらいイスラム国ってやっぱり手ごわいと思いますね。 萱野:なるほど。報道によると、12月の3日でしたっけ。上旬に人質になった後藤さんの奥さんにメールが来たと。人質を捕まえたグループから。で、なんらかの形で交渉があったというか交渉の可能性があった。で、1月8日動画が公開される形になった。この間に、問題解決をできた可能性っていうのはあったんですか、日本政府は。 鈴木:いや、直接のパイプを持ってないってことですから、なかなかそれは厳しいと思いますね。 萱野:なるほど。なかなかイスラム国が人質を拘束しているということすら分からなかったっていうのが国会答弁でも政府が言ってますけども、やっぱり分からなかった、分からないもんなんですか、これは。 鈴木:いや、どうでしょう。それは分からないですけれども、あらゆる可能性を考えていろいろ対策を立て、というか対処されてるとは思いますけれども、いかんせん直接のやり取りはできないわけですから、やれることというのは限られてると思います。