日本でこれから品揃えの悪い「スーパーマーケット」が増えていく理由
品揃えが悪いスーパーマーケットが増える
一般消費者にとってはあまり馴染みがないが、国内の食品流通は食品卸業によって支えられている。日本の場合は各地域に多数の小売企業が分散しているが、食品卸会社が全国各地の店舗に安定的に商品を届けているからこそ、地方の中小食品スーパーでも多様な商品を店頭に並べられるのである。 だが、商圏が縮小するとこうした流れに乱れが生じる。食品スーパーマーケットの場合、1つの商圏に複数企業が出店していることが多いが、商圏人口が減るとそのすべての共存は難しくなる。淘汰の結果、供給過剰になるところが出てくる。いまや、食品スーパーマーケットのライバルは競合他社店だけではなくなった。ドラッグストアやコンビニエンスストア、インターネット通信販売と多様化している。その分だけ、商圏人口の陰りが“弱い店舗”へのしわ寄せとして現れやすくなっている。 こうなると食品卸会社は食品スーパーマーケット各社の値踏みに入る。食品卸業界も各社が熾烈な競争をしており、シェアを伸ばすには業績が堅調な食品スーパーマーケットとの取引量を増やす必要があるためだ。販売の機会損失を防ぎたいという思いは、食品スーパーマーケットと食品卸会社とに違いはない。 食品卸会社も国内市場が縮む中で生き残りに必死である。人口減少社会では、どの企業も販売の機会損失にこれまで以上にシビアとならざるを得ない。「そうは問屋が卸さない」という諺があるが、文字通り売り上げが伸び悩む食品スーパーマーケットでは商品仕入れが困難になるケースも出てこよう。 こうして品揃えが悪くなると、さらに客離れが進む。“負け組”の食品スーパーマーケットは、商圏規模の縮小の影響が出る以前に姿を消すこととなる。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)