「8月に品切れかも…」強まるコメの不足感 「買いだめ控えて」呼びかけるスーパーも 昨年の猛暑や訪日客増える外食需要影響
流通の現場でじわり影響 農水省は「需給は逼迫していない」
長野県内のコメの流通現場でじわり供給の不足感が出始めている。一部スーパーがコメの大量購入を控えるよう呼びかける張り紙を掲示。卸売業者にも品薄感を指摘する声がある。2023年の猛暑で全国の産地の生産に影響が出たことに加え、外食産業や家庭で需要が高まったことが背景にあるようだ。農林水産省は、一定の民間在庫があり「需給は逼迫(ひっぱく)していない」として冷静な対応を求めている。 【写真】長野県産のコシヒカリなどが並ぶスーパーの売り場。現時点で店頭在庫に影響はないが、需給の動向に注意を払っている
「大量注文やお取り置きはご遠慮ください」と張り紙
「大量注文やお取り置きはご遠慮いただきますようお願いいたします」。県内や関東中部地方に出店するスーパーが、コメ売り場に張り紙を出した。23年産米が不足し、24年産米の収穫まで入荷が不安定な状況が続く見込み―と記載。品薄の店もあった。 一方、総合小売業のニシザワ(伊那市)が運営する商業施設「ベルシャイン」やスーパー「食彩館」の店頭在庫は現時点で充足している。ただ卸売業者からは大量購入が起きた場合、供給量を増やせないと伝えられたという。一部商品の供給が止まる可能性も示され、小山内聡商品部長は「実際に(大量購入が)起きれば、販売を制限しなければいけないかもしれない」。 南信地方のスーパーの仕入れ担当者も卸売業者から「銘柄によっては8月ぐらいに品切れになってしまうかもしれない」と聞かされた。23年産米は精米後に残るコメの割合「歩留まり」が悪かったという。中信地方の卸売業者は5月、取引先のスーパー約20社に、大量購入をお客に控えてもらうよう求めた。
「コメの値頃感が見直されている」
全農県本部(長野市)によると、インバウンド(訪日客)の増加もあり外食産業のコメ需要が回復。パンなどが値上げされる中、家庭でも「消費者の生活防衛意識が働いてコメの値頃感が見直されている」といい「全体的に不足感が強まっている」とする。
「コメを仕入れることができない」小売店も
宿泊施設や飲食店にコメを販売するむらおか食糧販売店(長野市)の村岡孝代表は「卸売業者から必要な数量は出してもらえると確認している」。ただ業務用の比較的安価なコメでは不足感が出ており、価格の高い種類も含めて取引先に供給している。卸も手がける南信地方の米穀店は、外食業界を中心に新規顧客の引き合いが強まっているが、需要に応えられない状況が続いているという。 日本米穀商連合会(東京)によると、全国の小売店などの会員を対象に4~5月に実施したアンケートで、18・6%がコメを「仕入れることができない」、66・4%が「仕入れできる量が少なくなっている」と回答した。