定年退職後に、嘱託社員として働く|嘱託社員の待遇面や注意点を解説【シン・会社のマナー】
「嘱託」という言葉を、耳にしたことのある人は多いと思います。「定年後に嘱託として働く」という働き方は、現在のように、定年後の継続雇用が広く導入される前からありました。しかしながら、嘱託社員とは具体的にどのようなものなのか、ピンとこない人も少なくないと思います。 写真はこちらから→定年退職後に、嘱託社員として働く|嘱託社員の待遇面や注意点を解説【シン・会社のマナー】 今回は、嘱託の定義はあるかということを発端に、定年後の嘱託社員について人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。
嘱託社員とは?
まずは、嘱託社員について見ていきましょう。 ◆嘱託の定義はある? 嘱託社員は、定年後も引き続き企業と契約を結んで働く従業員を指します。現在は高年齢者雇用安定法により、希望者全員の65歳までの雇用確保措置が義務化されています。そのため、再雇用制度を利用して働く人を嘱託と呼んでいるケースもあるようです。ただし、再雇用と嘱託は同義かというとそうではありません。 高齢者雇用の法整備がなされる前から、嘱託という制度は存在していました。旧来の嘱託制度は、定年後の継続雇用を目的としたものではなく、専門的な知識やスキルを持っている人が、定年後も会社と契約して働くことでした。今でも、嘱託を専門職的な位置づけとして、一般の再雇用と区別している会社もあります。たとえば、嘱託社員に特定の業務を委託して任せるという形です。 このケースでは、他社を退職した人も嘱託として契約する場合もあります。嘱託社員は、正社員、契約社員、パートタイマー、業務委託と比較するとどのような違いがあるのでしょうか? 嘱託というのは、明確な定義があるわけではありません。企業によって嘱託の扱いは異なりますので、雇用形態に着眼して見ていくことにしましょう。 ◆嘱託の契約内容は? 嘱託が会社と労働契約を結んで働く場合、正社員との違いは雇用期間です。正社員は雇用期間の定めのない従業員ですが、契約社員、パートタイマーは有期の雇用契約を結んで働く従業員です。雇用契約は、一定の期間ごとに更新することになります。つまり、雇用契約のもとに働く嘱託は、契約社員、定年後再雇用者と同様、有期雇用労働者ということになります。 ◆業務委託の場合 もうひとつの例は、業務委託契約を結んで働く場合です。会社によっては、定年後に専門的な仕事を業務委託する人を嘱託としている例もあります。業務委託というのは、一定の業務を依頼してその成果を受け取る契約であり、労働契約ではありません。 そのため、受託する人は労働者ではなく事業主であり、業務の遂行方法などは主に受託者にゆだねられています。有期雇用労働者として労働契約を結ぶ場合は、会社の指揮命令下で働くことになりますので、この点が業務委託とはまったく異なります。