コーヒー豆が急騰、冷める懐 最高値圏の影響が東北にも 店主ら苦い顔
コーヒー豆の国際取引価格が最高値圏に急騰し、東北でも消費者向けの小売価格や、飲食店向けの卸売価格に影響が広がっている。ブラジルなど主要産地の不作の影響が長引く一方、世界的な需要拡大が価格上昇を後押ししている。国内では円安も高騰に拍車をかけていて、コーヒー豆業者は価格転嫁を巡り難しい判断を迫られている。(経済部・菊間深哉、高橋唯之) 【写真】コーヒー豆の国際取引価格の推移 世界銀行(世銀)グループの商品市況データによると、高級品種とされる「アラビカ種」と、より安価な「ロブスタ種」の過去10年間の月別平均取引価格はグラフ(上)の通り。 直近の今年11月にアラビカ種は1キログラム当たり6・72ドルに達し、過去10年の最高値を記録した。データが残る1960年以降でも、ブラジルで大霜害があった77年4月の7・00ドル以来の異例の急騰となった。 ロブスタ種は、過去10年が主に1~2ドル台で推移したのに対し、今年11月は4・98ドルまで急上昇。9月に付けた5・33ドルは、77年春に5~6ドル台に達して以来の高水準だった。 世銀グループは10月に公表した「商品市況展望」で、アラビカ種、ロブスタ種の各主要産地のブラジルとベトナムで2021、22年の異常気象により供給量が著しく低下した影響が長引くとともに、需要量が毎年1%程度伸びていることが高騰の背景と分析した。 国際商品市況での価格上昇は円安も加味され、東北でも影響を広げる。総務省の小売物価統計調査によると、仙台市と山形市のコーヒー豆価格はグラフ(下)の通り。仙台市の直近の10月の価格は100グラム当たり230円で、10年前の120円台からほぼ倍増した。 東北各県でコーヒー豆を小売り・卸販売する東北萬国社(山形市)は、9月にコーヒー製品全般を8~10%値上げした。仕入れ価格の上昇幅は値上げ幅を大きく上回るが、相場が下がったタイミングで購入予約をするなど努力を尽くす。 赤塚宏之コーヒー課長は「気候変動はわれわれではなんともしがたいが、コーヒー豆生産者にはきちんとした対価を払い、より良い豆を作ってほしい。営業スタッフのスキルを磨き、サービスを強化すれば、顧客から理解をいただけると思う」と語る。 仙台市の老舗コーヒー豆小売店「ろじーな」では、輸入業者からの仕入れ値が1キログラム当たり平均1300円に達し、コロナ禍前の400円から3倍強になった。コーヒー豆の焙煎(ばいせん)に必要なプロパンガスの値上がりなども、さらなるコスト増につながる。 サービス券配布の対象を絞ったり、包装袋を切り替えたりして経費節減に努めるが、定番のブレンドコーヒーは22年に100グラム当たり480円へ50円引き上げたのに続き、さらなる値上げも検討せざるを得ない。 店主の宮嶋克雄さん(72)は「普段の生活の中で飲んでもらうのがコーヒーだと思っているので、簡単に値上げはできない。今は相場を様子見しながら、じっと我慢している」と話す。
河北新報