初期の「ロータス」へ大影響 生存も奇跡的! ギャモンMG TC(2) 速さと親しみやすさに唸る
当時の写真をもとに1年かけてレストア
ギャモンMG TCは、1960年代に複数のオーナーのもとを渡り歩き、ボディは一部が破損。状態が徐々に悪化していく中で、MGマニアであるデイブ・サンダース氏が1975年に購入を決める。 【写真】チャップマンを驚かせた「手作り」マシン ギャモンMG TC 同時代のスポーツカーと比較 (112枚) その時点で、ボディはブリティッシュ・グリーンに塗られ、格子状のフロントグリルが与えられていた。サンダースは、ピーター・ギャモン氏が作り上げた姿へ戻そうと考えたが、当時の写真の発見は叶わず、23年間保管されることになる。 ところが、1998年に状況は変化。グッドウッド・リバイバルに向けて、レストアがスタートした。ロータスのクラシックカーを専門にする団体、ヒストリック・ロータス・レジスターを通じて、当時の写真が入手できたのだ。 過去の所有者、ジミー・ブルーマー氏とジョン・スウィフト氏との連絡も実現。1952年の仕様に関する情報を入手しながら、レストア作業には1年が費やされた。 1999年の第2回グッドウッド・リバイバルまでに、ギャモンMG TCは完成。ステアリングホイールを握ったサンダースは、そのイベントの1つ、フレディ・マーチ・メモリアル・トロフィーを24位で完走。MGブランドの75周年記念展示にも、華を添えた。 その後も、欧州のクラシックカーイベントへ定期的に参戦。各国を、ギャモンMG TCは巡っている。惜しくもサンダースは最近この世を去っているが、最後まで自身のMGコレクションの1つとして、大切に維持していたという。
慣れが必要なシフトレバーとクラッチペダル
現在は、彼が遺した複数のモデルと一緒に、クラシック・モーターハブ社が販売を仲介している。しばらく走っていないということで、エンジンの始動には、ジャンプケーブルを繋ぐ必要があった。 バッテリーの位置は、テールコーンを持ち上げた、リアアクスルの直前。その後ろに、燃料タンクが載っている。 不足ない電圧で、エンジンは一発始動。アイドリングへ落ち着くが、排気音には1950年代のチューニング・エンジンらしく、不定期に破裂音が混ざる。 ドライバーのポジションは、通常のMG TCより後方。ハーネスで、身体はシートへ固定される。シフトレバーは長く、手の届く位置へ折り曲げられており、狙ったゲートへ素早く導くにはある程度の練習が必要だ。 クラッチペダルは、一部のクラシック・スポーツカーより扱いやすい。とはいえ、少し引っかかりがあり、これにも慣れが求められる。 いざ発進。と思ったら、クラッチミートが悪くエンスト。再びテールコーンを持ち上げ、ジャンプケーブルで始動。アクセルペダルを深めに踏み込み、次は滑らかにスタートを切れた。リアタイヤを、軽くスリップさせながら。 トランスミッションのギア比がクロスしており、速度が上昇するほど、頻繁な変速が求められる。リラックスして運転することは難しい。当時のレーシングドライバーは、160km/h以上まで加速したようだが、回転数は6000rpmに達していたはず。