元ブラックラムズのオールブラックスHC ~スコット・ロバートソンとは何者なのか~
8月10日のアルゼンチンに30-38で敗れた。直後のコメントがよかった。
「まず自分自身を見つめる。ひとりのヘッドコーチとして、もっとできたことがあるはずだと問いかける。今週の練習の組み立てをどうすべきだったのか。どうしたら、もっと強みを打ち出せたのか。24時間かけて反省します」(ニュージーランド・ヘラルド)
活字にすれば当たり前のようだ。しかし、しょっちゅう負ける者は、素直にこういう態度をとれない。おのれの周辺や環境をいきなり敗因にまぜてしまう。1週間後、こんどは42-10で勝利した。
静岡ブルーレヴズからクボタスピアーズ船橋・東京ベイへ移籍のSH、ブリン・ホールは日本へやってくるまでクルセイダーズのリーダーシップグループの一員だった。スコット・ロバートソン論には説得力がある。
「大きな絵を描いてテーマを掲げるのが本当に上手だ」。他方で「ディテールについては仕上げを担う人が必要」とも話していた。太い輪郭の全体像を示し、具体的な課題を明確に定め、細部のスキルはエキスパートに委ねる。
さらにシニア格の選手には「何かを変えたいと彼(ロバートソン)に告げるライセンスが与えられていた。リーダーシップのグループが信頼されれば、彼らでチームを前に進められる。グループがハッピーなら、そのことがチームに浸透、ネガティブな姿勢はなくなりコーチとの衝突も起きない」。なんだか読んでるだけで優勝できそうな気がしてくる。
スコット・ハンセンは現在のオールブラックスのアシスタントコーチだ。ジェイミー・ジョセフ体制のジャパンの指導スタッフでもあった。そのレイザー評は次の一言。
「ついていきたくなる人間」(RNZ)
あらためてニュージーランドはラグビーの国である。いつだって才能はひしめく。であるなら最大の敵は「チーム内のいやなこと」かもしれない。それさえなければ世界の頂点はすぐそこだ。スコット・ロバートソンはサーフィンを愛する。スーパーラグビーを制するたびに恒例のブレイクダンスを旋回しつつ舞った。とことん「自分らしく」生きると他者の感じる不自由にも敏感になる。選手のストレスを素早く察知できる。たぶん、そんなにいやなことは起きない。