ロシアが核使用の敷居大幅に引き下げ、プーチン氏に幅広い決定権 ウクライナ戦況に合わせた異例の見直し、世論は支持、核威嚇依存体質強まる
西側が精密誘導ミサイル供与などで対ウクライナ支援を強化する中、クレムリンはロシアの抑止力を回復させるという困難な課題に直面しており、核ドクトリン変更はこうした面から西側をけん制する手段の一つであると語った。 ▽プーチン氏の頭の中 米CNNテレビによると、国連軍縮研究所のパーベル・ポドビッグ上席研究員(核軍縮・核安全保障問題担当)は、改定案は特に、何をロシアに対する攻撃と見なすかについて「わざと曖昧」にしていると指摘。 ハーバード大ケネディ行政大学院ベルファーセンターのマリアナ・ブジェリン上席研究員(核不拡散・核軍縮問題担当)も、何をレッドライン(越えてはならない一線)とするかはすべてプーチン氏の頭の中にあり、改定案は核使用基準について、プーチン氏ら指導部に幅広く解釈する権限を与える結果となったと述べた。 ▽200回超言及 米ワシントンに本部のある戦略国際問題研究所のヘザー・ウィリアムズ上席研究員(ロシア安全保障・核問題担当)は9月27日の論文で、ウクライナ侵攻から2023年7月までの間、ロシアの指導者らが侵攻に関連して何らかの形で「核兵器」という言葉を使った回数は200回以上に上るなど、ロシアはこれまでも西側やウクライナに譲歩を迫るため核の威嚇を行使してきたと指摘。
その上で、核ドクトリン変更の動きは、ウクライナに対する西側の支援を阻止するために、ロシアがますます核の威嚇に依存するようになっていることを示したと語った。 ▽ボタンに合わせた服 改定案では、無人機による大規模攻撃や、核保有国の支援を受けた非核保有国の侵略も核使用の検討対象としているが、これは既にウクライナ戦争で生じている事態だ。ここから、何のための改定かとの疑問に対する答えも浮かび上がってくる。 ノーバヤ・ガゼータは9月27日の論評で、核使用の条件として、これまで敵の通常兵器による攻撃により「国家存続」が危機に陥った場合を挙げていたのに対し、今回の改定案で「国家主権への脅威」でも核使用を検討するとするなど、核使用の敷居を下げたのは明らかだとした。 その上で、ウクライナによる無人機を使った大規模攻撃は行われており、核使用の条件は既に満たされてロシアは核を使用しなければならないはずだと指摘。核ドクトリンは通常、どのような事態にも対応することを想定して作成されるが、今回の改定は核大国として初めて、実際の戦況に合わせて核ドクトリンを見直そうとする試みで、いわば「どこかで見つけたボタンに合わせ、洋服をあつらえる」ようなものだとやゆした。