老後のひとり暮らしに立ちはだかる<5つの壁>とは。自由なおひとりさま生活が抱える「心と体」両面のリスクを考える
厚生労働省が実施した「令和4年 国民生活基礎調査」によると、65歳以上の高齢者がいる世帯のうち51.6%が単独世帯となっているそう。そのようななか、生前整理や遺品整理で多くの高齢者のひとり暮らしをサポートしてきた、株式会社GoodService代表の山村秀炯さんは「老後のひとり暮らしには、若い頃や家族と暮らすときとは違った<壁>がある」と話します。そこで今回は、山村さんの著書『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』から、一部引用、再編集してお届けします。 【書影】生前・遺品整理のプロが、自由なおひとりさま生活を送るための知恵を解説。山村秀炯『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』 * * * * * * * ◆老後ひとり暮らしの5つの壁 「おひとりさま」は気楽で自由です。だからこそ本人の性格や生活スタイルが如実に現れます。 そしてそれは、老後ひとり暮らしの壁を越えられる人と、見て見ぬ振りをする人との違いにも通じていると思います。 ここまでを読んで、「そういえば自分は何も準備していない」「気にはなっていたけど何もしていない」と、あらためて感じた人もいるでしょう。 一方で、自己管理や人付き合いが苦手なタイプの人は、「面倒だ」とか「いまから自分を変えるなんて無理だ」と感じたかもしれません。 でも、こう考えてみてはどうでしょうか? 「おひとりさま」だからこそ、リスクははっきりしていますし、的は絞れています。 他人にアレコレ言われないからこそ、自分が必要だと思うことだけやっておけばよいのです。
◆お金の壁、健康の壁 (1)お金の壁 歳をとると判断能力が衰え、お金の管理が困難になっていきます。 認知症になってしまうと、自由に預貯金をおろすことすらできません。 また、収入がひとり分であることから、老後資金などを十分に準備することが困難となり、経済的なリスクが生じる危険性があります。 よく、ひとりだからお金がかからないといいますが、家賃にしても光熱費にしても食費にしても、夫婦2人で稼いで支出をシェアしたほうがはるかに効率的です。 子どもがいるとまた話は別になるのですが、ひとりの気楽さから支出が増えてしまって、意外と貯金が少ない「おひとりさま」も多いのです。 金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」によれば、60歳代のおひとりさま世帯の貯蓄額の中央値は300万円でした。 「老後2000万円問題」のときと同じ計算をすると、2022年の試算では老後800万円が必要ですから、まったく足りません。 もっとも3000万円以上の世帯も16.9%、金融資産保有なしの世帯も28.5%あって、平均値だと1388万円になります。 (2)健康の壁 体調を崩した際のセルフケアが難しく、健康を害するリスクがあります。 高齢者の場合、体調不良時に適切な治療を受けることができず、重大な病状に陥る可能性があります。 特に問題となるのが、大きな病気や怪我で入院するときです。 通常、病院に入院するときには、支払いの連帯保証人、万が一の事態に備えての身元保証人、そして自分が意識不明になったときに職場や大家さんなどへの連絡や着替えの洗濯などちょっとした用事を代行してくれる世話人が必要になります。 同居人のいない「おひとりさま」の場合、これらを誰に頼むかが難問となります。
【関連記事】
- 樋口恵子 嫁姑問題を避け、自立しようと健気に生きてきたのに思いがけない成行きが。近ごろの親は老いの生き方・住まい方まで難しい【2023年BEST】
- 亡くなったあと何週間も…遺品整理・特殊清掃の実態と相場。自治体が<孤独死>より<孤立死>という言葉を使い始めた理由とは
- 高齢者の孤独死、23区だけで年間4千人以上…自治体による終活支援の取り組みとは?研究員「住む場所でサービスに差が出ないよう国にも動いてほしい」
- シングル女性の老後の家問題。フリーライター、両親の介護で「開店休業」に。会社員より離職は簡単で、仕事復帰は困難。介護離職はしちゃいけない
- 引き取り手のない「睡眠」郵便貯金、なんと3476億円。その他にもタンス預金や保険金など…親の「隠し財産」をもらい忘れない方法とは