五輪開催直前に総選挙。フランスで今何が起きているのか、どうしても気になる5つの疑問
6月上旬に欧州連合(EU)加盟27カ国で実施された欧州議会選挙の結果、フランスでは極右政党が歴史的勝利を収め、一方で大敗した与党連合を率いるマクロン大統領は国民議会(下院)を解散し、総選挙に踏み切った。 主要メディアの記事見出しを読むと、ブルームバーグ(6月15日付)が「仏大統領が賭けに出た」、日本経済新聞(6月17日付)は「仏選挙、世界市場の火種に」などと、五輪開催を控えた世界の大国に似つかわしくない不穏な表現であふれ返っている。 いまフランスで何が起きているのか。現状を整理してみた。
【Q1】なぜ注目されているのか?
マクロン大統領は6月9日に国民議会の解散を決定し、第1回投票を同30日に、第2回の決選投票を7月7日に実施するスケジュールを発表した。 国民議会議員の任期は5年。現職の議員は2年前の2022年6月に選出されたばかりで任期を半分以上残しており、それだけにこのタイミングでの解散・総選挙は驚きをもって受け止められている。 外国為替市場では下落の主役を長らく日本円が担ってきたが、ここに来てユーロが舞台の中央に躍り出た。 直近(6月20日終値)のユーロドル相場は、欧州議会選挙の投票開始直後(同6日終値)との比較で1.72%安と、ユーロに対する強い下落圧力を確認できる。 フランスの解散・総選挙にこれほど注目が集まり、為替市場まで動かす大きなうねりとなっているのはなぜか。 それは端的に言えば、極右首相の誕生がかかっているからだ。 総選挙の結果、親EUの大統領と極右(すなわち反EU)の首相という最悪の「ねじれ」が生じれば、フランスの内政混乱ひいてはEUにおける遠心力の増大につながるかもしれない。そうした懸念から、ユーロを手放す動きが強まっている。 極右もしくは極左政党の国政入りは、欧州債務危機後に繰り返されてきた記憶も相まって、「EU・ユーロ圏離脱の懸念に直結する」展開を連想させるようで、ブレグジット(イギリスのEU離脱)をもじった「フレグジット(フランスのEU離脱)」といったフレーズまで聞こえてくる。