五輪開催直前に総選挙。フランスで今何が起きているのか、どうしても気になる5つの疑問
【Q3】極右勢力が国民議会を押さえたらどうなる?
極右政党が勝利する可能性だけについて言えば、2017年や2022年の選挙とは比較にならないほど高まっている。 したがって、極右政党が勝利するかどうかはもはや論点とは言えず、フランスの先行きに関して足もとで注目すべきことは何かと問われれば、筆者としては、内政運営の混乱を懸念した国債売りがどうなるかを挙げるだろう。 いずれにしても、まずは総選挙の現状を簡単に整理しておきたい。 ロイター(6月11日付)が報じた直近の世論調査によれば、国民連合の獲得議席は「235~265議席」と想定される。 国民議会の総議席数は577議席、過半数は289議席なので、国民連合の単独過半数確保は難しいものの、他の保守政党と連携することで多数派を形成することはできそうだ。 【Q1】への回答でも指摘した通り、国民議会が極右勢力に制圧される一方、大統領は中道右派という「ねじれ(コアビタシオン)」状態に陥る可能性が高い。マクロン大統領は仏紙フィガロとのインタビューに応じた際、総選挙で極右政党が勝利しても辞任しないと明言している。 マクロン大統領は極右勢力の台頭への危機感を煽(あお)って抗戦するが、趨勢(すうせい)を覆すのは難しいだろう。 不法移民の排斥、反EU路線を全面に押し出す極右勢力の「フランス第一主義」は、パンデミックからロシア・ウクライナ戦争へと続く環境の劇的な変化、その副産物としての高インフレに疲弊したフランス国民の感情にしっかり刺さっている。 過去の国民議会選挙や大統領選挙においては、極右勢力の台頭への危機感がストッパーとなり、第1回投票で敗北した候補の支持者が決選投票でマクロン大統領を支持した結果、懸念は現実化に至らなかった。 フランスに限らず、他のEU加盟国で極右もしくは極左が台頭した際も、最終的には「自制心」が発揮される形となった。 しかし、今回は様相が異なる。 第一党への躍進が確実視される国民連合に対し、他の極右政党や中道右派政党が連携を模索する可能性が報じられており、極右勢力による多数派形成のストッパーになる何かを探すのは簡単ではない。 もちろん、そうした連携が交渉の過程で暗礁に乗り上げ、過半数を押さえる会派が形成されずに終わる不安定な展開もあり得るが、そのあたりのシナリオを現時点で決め打ちするのは、正直なところ難しい。