参加表明はマドリーとバルサだけ。「欧州スーパーリーグ構想」を巡るカネと脅威【現地発コラム】
高台からマドリーは何を見ているのだろうか
ではそのような高台からマドリーは何を見ているのだろうか。それは脅威以外にない。リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドという2人の不世出のスーパースターを失い、ラ・リーガはレベルの低下が進んでいる。メディアやビジネス界隈で流通する資金とともに、ファンの関心はプレミアリーグに移り、とりわけ、ファイナンシャル・フェアプレーの盲目にも乗じて、石油王や投資家、気まぐれな実業家が牛耳るクラブに対して、劣勢を強いられている。 マドリーのようなクラブは、サッカーが生み出す利益からしか選手のサラリーを払うことができない。キリアン・エムバペのようなスーパークラックには、チームNo.1の高給取りの2倍(大げさな部分もあるが)のサラリーを支払うことができるが、それとて現在パリSGで受け取っている額の4分の1に過ぎない。もちろん、マドリーでプレーすることの栄光は保証されるが、このままでは栄光にも値段が付く日もそう遠くないだろう。 一つ確かなのは、欧州のコンペィションと各国リーグ戦の分裂である。スーパーリーグの一員になることを受け入れる者は、サッカー界で最も幅広い中産階級的なクラブを直撃していると理解されても仕方がない。とはいえ同時に彼らは、ビッグクラブの存在なしに生き残ることはできないのも紛れもない事実だ。 遅かれ早かれモラルとお金がぶつかり合う興味深い議論が始まるだろうが、結局のところそれも誰もが現在のステータスを維持すべく、取り分を巡って争っているに過ぎない。 サッカーは利益を生み出し、あらゆる人間の共有財産としての役割を果たしてきた。問題はどうすれば今後もその収益性を維持し続けることができるかだ。お金とモラルを巡る議論が答えなければならない唯一の疑問でもある。 答えを知っている人がいたらぜひとも教えてほしい。私はまだその新しい枠組みを想像することができない。 文●ホルヘ・バルダーノ 翻訳●下村正幸 【著者プロフィール】 ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。 ※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。