インフレ期待が過去最高、日銀7月利上げを後押し-円安で物価先高観
(ブルームバーグ): 日本のインフレに対する投資家の期待値を示す指標が過去最高を更新した。外国為替相場の円安進行が物価上昇圧力を強めるとの見方が背景にある。インフレ期待の上昇は実質金利の低下につながり、日本銀行に追加利上げを促す要因となる。
新発10年国債から物価連動債の利回りを差し引くことで将来の物価上昇予想を示すブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は27日、1.597%に上昇。ブルームバーグのデータで、インフレ連動債の発行が始まった2004年以降の最高水準を更新した。
円相場は26日に1ドル=160円台後半と約38年ぶりの安値水準に下落。円安加速は輸入価格の押し上げ要因で、物価先高観を強めている。
7月30、31日の日銀金融政策決定会合では最新の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」が公表される。日銀は同リポートで示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していけば政策金利を引き上げるとしており、インフレ期待上昇は利上げに踏み切る強い材料になり得る。
明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは、インフレ期待の上昇により「日銀も1回や2回利上げをしても十分緩和的であるという説明がしやすくなり、利上げを後押しする要因になる」と指摘。このまま円安が続けば、7月に国債買い入れ減額と同時に追加利上げに踏み切る可能性は高いと予想する。
27日の債券市場では円安進行を受けて、長期金利が1.075%と約1カ月ぶりの水準に上昇した。日銀の植田和男総裁は6月会合後の会見で、1%前後の長期金利について、長期のインフレ予想が上昇しているため、長期の実質金利はマイナスの水準にあり、「今のところ十分まだ緩和的な状況だ」と述べた。
植田総裁はまた、7月会合での利上げについて「当然あり得る」と発言。ブルームバーグが25日に実施した特別調査では、43人のエコノミストのうち33%が7月の追加利上げを予想した。
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Masahiro Hidaka