有明海上にどこまでも続くたくさんの長方形。その正体は…6年間佐賀に通う『孤独のグルメ』久住昌之があの養殖の秘密を現地取材
◆現代の海苔養殖の始まり 1949年にイギリス人の女性藻類学者ドリューが、海苔の胞子が牡蠣殻に潜り込んで夏を過ごすことを発見した。そこから現代の海苔養殖は始まった。 昭和23年か。7世紀から海苔を食べてきた歴史からしたら、つい最近の話だ。それまでは、胞子が夏の間どこにいるのか、わからなかったのだそうだ。だから海苔の採れる場所に網を張って、海苔の胞子が自然に付着するのを待つしかなかった。 ドリューの発見は、日本の海苔養殖の革命だったのだ。初めて知った。 養殖方法には、有明海などの支柱棚式と、もっと深い海で行われる浮き流し式がある。 有明海の支柱式には、他の海にない利点がある。有明海は干満の差が日本一大きいのだ。 干潮になると水位が下がり、なんと海苔の付いた網が空気中に出てしまう。 海苔はこの間、太陽光を直接浴び、満潮が近づくと、また海の中に沈む。このことが、海苔をよりおいしくするのだという。これにもちょっとびっくりした。そんな、海草を海から出して日に当ててたら、乾いて死んで(枯れて)しまいそうだ。 ※本稿は、『新・佐賀漫遊記』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。
久住昌之