有明海上にどこまでも続くたくさんの長方形。その正体は…6年間佐賀に通う『孤独のグルメ』久住昌之があの養殖の秘密を現地取材
漫画・ドラマともに大人気の『孤独のグルメ』の原作者として知られ、日本中を飛び回る久住昌之さん。そんな久住さんがどっぷりハマり、足掛け6年以上通っているのが<佐賀県>です。そこで今回は、久住さんの著書『新・佐賀漫遊記』から、久住さん流・佐賀県の楽しみ方を一部抜粋してご紹介します。 【写真】佐賀空港で食べた、佐賀のローカルフード「シシリアンライス」。久住さんの感想は? * * * * * * * ◆有明海を見て、海苔のことを考えた 飛行機で初めて佐賀に来た時、機窓から、空港近くの海の上に、見たことないものを見て目を奪われた。 海面に、海の色より濃い色の長方形が整然と並んで、どこまでもどこまでも続いている。長方形には黒っぽいのと、もっと薄い色のがある。 空からで周りに比べるものがないので、大きさはわからないが、ひとつ2メートル×8メートルくらいだろうか。いやもっと大きいか。 それらは水面に浮いているのではなく、浅い水面下にあるように見え、そこが不思議だ。 飛行機の高度が下がると、その間を行き来する小さな船が何隻か見えた。 なんだあれ? と眺めながら、しばらく考えて、「あ……ひょっとして、海苔の養殖かな」と思い至った。 有明海苔。眼下の海は、たぶん有明海だ。いやしかし「そんなに? 海苔を?」と思うほどの広大な面積に長方形は広がっていた。 佐賀に着いて、土地の人に聞いてみると、やはりそれは海苔だった。 海苔はそんなに大量に作られているものなのか。いきなり佐賀に驚かされた。
◆日本人は海苔を日常的に食べている でも冷静に考えたら、海苔は、日本人なら誰でもどこでも日常的に食べている。 コンビニに行けば、たくさんの種類のおにぎりが並んでいる。のり巻きもある。のり弁もある。寿司屋に行けば、海苔巻きをはじめ様々な巻ものがある。 そしてそれらは家庭でも作られる。実家には焼き海苔を保管する機密性の高い大きな茶筒型のブリキ缶があったな。ただお醤油をつけて、白いごはんを巻いて食べた。 お餅も海苔で巻いたら磯辺巻きだ。串団子にも海苔で巻いたのがある。 ざる蕎麦には細切りした焼き海苔だ。ラーメンにもしばしばのっている。いや大量にのせてる家系ラーメンもあるぞ。焼きそば焼きうどん冷やし中華には細切りを振りかける。 海苔せんべいもある。あられにも巻いてある。 旅館の朝食には、焼き海苔や味付け海苔が出る。居酒屋の締めの海苔茶漬けもある。 その他にも、ポテトチップとかスナック菓子には「のり味」が必ずある。ふりかけもあるか。 お歳暮お中元には高級海苔が贈られたりする。