岩手生まれ水稲の省力栽培に高校生挑戦 1年目の収穫で及第点、作付面積を一気に3倍に
岩手県矢巾町で昨年11月に当時高校1年生だった阿部倫太郎さん(17)が水稲の栽培方法「イネの初冬直播(じかま)き栽培」に初挑戦した30アールのほ場が収穫を迎えた。高齢化が進む農業の現場で省力が期待できる岩手発の新手法によって作付した「ひとめぼれ」は、予想以上の収穫量をもたらし、そのほとんどの出来が及第点に達した。手応えを得た阿部さんは今年、作付面積を一気に3倍の90アールに拡大させた。 ■地元企業が担い手支援 好天に恵まれた9月30日午前10時過ぎ、阿部さんを支援する農業機械販売「みちのくクボタ」(岩手県)の担い手推進部企画チームが持ち込んだ最新鋭のコンバインで稲刈りが始まった。黄金色に実った「ひとめぼれ」を刈り取りながら籾の水分量など各種データが弾き出されていく。 データのほとんどが及第点の数値を示し、最初は硬い表情だった阿部さんにも笑顔が浮かんだ。稲刈りも中盤に差し掛かると、コンバインの運転席に座った。企画チームの藤原辰徳さんが横に立って指導し、阿部さんは真剣な表情で操縦にも挑戦した。 10アール当たり収量は乾燥前で600キロ。1俵=60キロ換算で10俵になり、阿部さんは「6俵とれればと思っていたので、予想外の多さに驚いた」という。 イネの初冬直播き栽培は田植えを省ける岩手県生まれの画期的なコメの栽培方法。岩手大学農学部の下野裕之教授がコメ農家の高齢化と担い手不足を見越して平成20年から実用化の研究に取り組んできた。 農閑期の初冬に直播きした種籾を深さ1~3センチの土の中で越冬させ春先に出芽させる。種籾を冬の寒さから守るためにチウラム水和剤(農薬の一種の種子消毒剤)を種籾にコーティングするのが大きな特徴。 高齢化でリタイアしたコメ農家のほ場は受託栽培する担い手農家や農業法人に急速に集約化され、規模拡大が喫緊の課題となっている。初冬直播き栽培は規模拡大のネックとなってきた1カ月がかりの育苗と田植えの手間が省ける。 ■ほ場確保へ祖父を説得