岩手生まれ水稲の省力栽培に高校生挑戦 1年目の収穫で及第点、作付面積を一気に3倍に
「将来はこの地域でコメを50ヘクタール栽培したい」という阿部さんが初冬直播き栽培に挑戦したのも2つの手間が省けるためだ。「春に集中する農作業を秋に分散して規模拡大できるのが一番の魅力」と、祖父を説得して麦用だった30アールを空けてもらい、農業関係団体や農機具メーカーのクボタの支援も取り付け、町内初の初冬直播き栽培を実現させた。
「ひとめぼれ」の県の栽培目標は10アール当たり玄米で540キロ。阿部さんは120キロ少ない420キロに留まった。専門家は「手間を省いた栽培方法に初めて挑戦してこの収穫量なら及第点ですよ」と話したが、阿部さんは「除草は上手な人が3回で済むのに5回もやってしまった。出穂前の追肥もタイミングを逸してうま味が少し足りない米になった」と反省しきり。
それでも、指導役で岩手県盛岡農業改良普及センター産地育成課上席農業普及員の臼井智彦さんは「将来に向けて良き課題が残り、逆に期待が膨らんだ。情報収集力のすごさ、コメづくりにかける情熱、彼はスーパールーキー」と話した。
下野教授も「彼の向上心や先見性、研究心の高さに驚かされた」と舌を巻く。
■2年目は「冒険」
1年目の成果で祖父ら実家から理解を得られ、今年の初冬直播き栽培用に90アールを確保。10アール当たり8キロと10キロの種籾をそれぞれ45アールに直播きした。10アール当たり8キロは量が少なくなる分だけコストは下がるものの、十分な数の出芽につながるかは読めない。
「10アール当たり8キロは冒険かもしれない。でも、これでとれたら採算ベースに乗る」と目を輝かせた。(石田征広)