厳しい修業と”以心伝心”で知られる禅宗の仏像はどんな姿をしているのか
エキゾチックな仏像
禅宗寺院を訪れたとき、奈良の古寺などにはないエキゾチックな雰囲気に驚かれた方もいるのではないでしょうか。鎌倉時代以降に中国より渡来した僧たち、あるいは中国に渡って修行してきた日本の僧たちによって伝えられた禅宗は、当時の中国の香りを色濃く残しています。 境内の土地堂(つちどう)とよばれる場所には伽藍神(がらんじん)がまつられていますが、これは中国の道教の神様を取り入れたものです。建長寺の伽藍神(写真)は五躯からなるもので、いずれも本来は中国の土地神さまでした。
奈良国立博物館の像(写真)は、動きのある表現に特徴がある鎌倉時代の彫刻作品の中でも、出色の疾走感といえるでしょう。本来は一方の手に木槌、もう一方に鉄くぎを持っていたともいわれます。これは修行を怠る僧に、まさにくぎを刺すためのものです。このような神さまが、おそろしい表情をして駆け寄ってくることを思えば、誰しもが態度をあらためるのではないでしょうか。
また、江戸時代に隠元さんによって伝えられた黄檗宗(おうばくしゅう)では、さらに異国的な香りが強く漂っています。とくに仏像は、当時日本で作られていた像が、隠元さんの眼には仏教の法にかなったものではないと映ったようで、宇治・萬福寺の開創にあたっては、当時長崎にいた中国人仏師の范道生(はんどうせい)に仏像の制作を依頼しました。 本展には、十八羅漢(らかん)のうち蘇賓陀尊者(すびんだそんじゃ)、羅怙羅尊者(らごらそんじゃ)(写真)、賓頭盧尊者(びんづるそんじゃ)、韋駄天(いだてん)立像が出陳されます。いずれも異国情緒たっぷりですが、なかでも羅怙羅は、胸を開いてそこから仏の顔をのぞかせています。羅怙羅は、お釈迦さまの息子ですが、容貌が醜かったとも伝えられています。でも心には仏が宿っていることをあらわしているのです。まさに本展のサブタイトルにもあるように「心をかたちに」したものといえるでしょう。