和倉温泉、建物解体の動き 2旅館、更地化や一部取り壊し 早期再開へ自費選択
能登半島地震で甚大な被害を受けた七尾市和倉温泉で、旅館再建に向けて建物を取り壊す動きが出てきた。老舗「おくだや」は来年中の再開を見据えて更地にし、七尾湾に面する大型旅館「美湾荘」は18日から半壊建物の解体に着手する。懸念された護岸修繕も年内に始まる見込みとなっており、北陸を代表する観光拠点が復興へ一歩ずつ進んでいる。 【写真】建て替えに向けて18日から解体作業に入る美湾荘 公費解体は多くの被災者が申し込んでいることから順番待ちの状態で、大きな建物の解体に対応できる業者も限られている。いつ解体が始まるか分からず、おくだやと美湾荘はいったん費用を立て替え、後で七尾市から払い戻しを受ける「自費解体」を選択した。 創業117年のおくだやは和倉温泉の一番小さな宿で、2年前に大改修したばかり。地震で木造3階建ての建物の基礎がゆがみ、修繕には建物を骨組み状態にする必要があったため、5代目の奥田一博さん(45)は修繕を断念。来秋ごろの建物完成を目指し、10月下旬に自費解体を終えた。 和倉復活のかぎとなる護岸については国や石川県、七尾市、民間団体が2026年度に復旧完了を目指す工事計画を9月にまとめており、こうした動きが「解体を後押しした」とみる旅館関係者は多い。 3棟に計68室を構える美湾荘はフロントや8階建ての中央部の1棟が大きく損壊した。年内は工事用の仮囲い設置などを進め、来年1月以降に本格的な解体に着手する。再建時には5階建てに規模を縮小する計画という。 市には別の2旅館が公費解体を申請し、現在は建物のアスベスト調査を実施中という。おくだやの奥田さんは「和倉一丸で必ず湯のまちを復活させて大勢の客を迎えたい」と話した。