不始末だらけの「アマゾン宅配」、それでも配達員に「ミスを伝えない」謎すぎる方針
【アマゾンの責任】軽バン配達員の成り手が減る?
課題の1つは、今後、ラストワンマイル配送(※物流センターから最終配達先への配送を担う、比較的短距離の配送のこと)の担い手として期待される貨物軽自動車運送の発展と拡大に冷や水をかけかねないことだ。 現在、「物流の2024年問題」によって長時間労働ができなくなった(=収入が減った)トラックドライバーが独立起業したり、あるいは副業、あるいは多種多様な働き方を求める人たちが、軽バン配達に流入することでその数が増えている。 (貨物軽自動車を除いた)事業用貨物自動車の保有台数は、2021年で100万4000台と、2016年比で6.2%増加した。一方で、事業用軽貨物自動車は2016年から2021年で31.4%も増え、現在は28万8226台となっている。 対して、宅配便の取り扱い個数は、2016年に40億1900万個、2021年には49億5300万個である。増加率は23.2%であり、事業用軽貨物自動車の増加率と比べ、8ポイントのかい離がある。 一見すると配達員が過剰に増えているように思われるが、実は、国土交通省が集計している宅配便取り扱い個数には、アマゾンやヨドバシドットコムなど、一部のEC・通販事業者が行う自前物流の取り扱い個数は含まれていない。 だからこそ軽バン配達員への期待は大きい。EC・通販のマーケットは今後も拡大し続けることが予測されることから、ラストワンマイル配送の担い手として期待される貨物軽自動車運送事業は、戦略的に大切に育成することが必要である。 にもかかわらず、軽バン配達員における仕事の選択肢の中で間違いなく大きなウエイトを占めるアマゾンが、軽バン配達員を酷使し、使い捨てにすることを続けていれば、いずれ軽バン配達員の成り手は減っていくだろう。 あえて厳しい言い方をすれば、この成長分野をアマゾンに潰されてはたまったものではないのだ。
【アマゾンの責任】置き配拡大に「配達員の質向上」が必須だが…
政府が推し進める「物流革新」政策では、2024年度中に再配達率を現状の11%台から6%へと半減させることを目標として掲げている。そのための施策として、置き配の推奨や、宅配ボックスの拡大などのさまざまな施策に取り組んでいる。 だが、もし冒頭で述べたように「置き配を指定したら、マンションのオートロック前に置かれてしまった」などということが増えたら、むしろ置き配を嫌がる人は増えるだろう。つまり、再配達の削減や置き配の拡大といった物流クライシス対策には、配達ドライバーの質の向上が必須なのだ。 少なくとも、配達員にミスを知らせないといった今のようなやり方をしていたら、アマゾンの配達を担う軽バン配達員の質が向上するわけがない。