不始末だらけの「アマゾン宅配」、それでも配達員に「ミスを伝えない」謎すぎる方針
【アマゾンの責任】日本政府の物流革新に「ミス」が生じる可能性も…
また、アマゾンが日本市場における配達に関する各種実績データを非公表にしていることも大きな課題だ。なぜなら、政府の物流革新政策のかじ取りにもミスが生じる可能性が高いからである。日本におけるアマゾンの自前物流規模は、予想以上に大きいかもしれないのだが、これが分からない。 米国におけるアマゾン自前物流による2022年の配送件数は約59億個だった。これは、米国宅配大手のUPS(約53億個)、FedEX(約33億個)を上回る。また2023年、アマゾンの当日および翌日配送件数は、米国内で40億個以上、全世界で20億個以上、総数は70億個を超えたという。 となると、日本国内でもアマゾンによる自前物流の取り扱い個数は、ヤマト運輸(2023年:22億9600万個)には及ばずとも、佐川急便(2023年:13億7300万個)、日本郵便(9億8000万個)を超えている可能性も否定できない。 これだけの配送規模を持つアマゾン自前物流の実績データが隠され、「物流革新」政策に反映されていないとすれば、当然政策のミスリードを起こす(あるいは、「起こしている」)可能性がある。 アマゾンは、政府が開催する、物流関係の研究会やワーキンググループにこれまで出席してこなかった。2023年あたりから、出席者名簿に名前を見るようになってはきたものの、その発言等は非公開になっている。 アマゾンが、その巨大なビジネス規模や、日本社会への影響を意図的に隠すことで、規制や世論の反発などをかわそうと考えているのではないかと邪智するのは、筆者だけではあるまい。 実は本稿執筆にあたり、筆者はアマゾンへの取材を申し込んだが、完全に無視されている。だから、本稿は筆者の推測だらけである。 本稿の指摘に対し、間違いがあるというのであれば、ぜひアマゾンは(筆者の取材に応じなくとも)世間に対し、その証となる数字とともに反論してほしい。 アマゾンは、日本社会にとって善良なる仲間なのか、それとも自らの欲望のままにマーケットを食い荒らすイナゴなのか? 2019年、アマゾンは「世界で最も影響力のある経済的・文化的勢力の1つ」に選ばれたが、その影響力が日本社会にネガティブに作用する存在でないことを、切に願う。
執筆:物流・ITライター 坂田 良平