不始末だらけの「アマゾン宅配」、それでも配達員に「ミスを伝えない」謎すぎる方針
軽バン配達員に「ミスを伝えない」アマゾンの謎
以前、筆者の自宅に、違う人宛ての商品をアマゾンから誤配されたことがあった。アマゾンに連絡したところ、誤配された商品は捨ててくれと言われた。 調べてみると、よほど高価な商品でない限り、「誤配=誤配先での廃棄」というのがアマゾンの第一対応であり、希望者のみ日本郵便で回収を行うらしい。「誤配したドライバー当人に回収させればいいじゃないですか?」と聞く筆者に、カスタマーセンター担当者は、さらに驚くべきことを言った。 ・配達ドライバーとの契約上、誤配回収は契約外行為になるので、行わせることができない。 同様に、誤配に関する事情聴取なども、契約外行為なので行えない。 「ということは、誤配をしたドライバーは、自分自身が誤配をした事実すら知らされないということですか?」、驚いて尋ねる筆者に、カスタマーセンター担当者は「その通り」だと答えた。 そうなると、冒頭に挙げた「マンションのオートロック前に置き配をした」ドライバーも、そのミスをフィードバックされないのだろうか? 誰しも、誤りは犯すものである。誤った行動から学び、成長するのが人である。その成長の機会を与える責任がアマゾンにはあると思うのだが、アマゾンの考え方は違うのだろうか?
「目に見えぬプレッシャー」を受ける軽バン配達員…
それだけでない。アマゾン配達員が受けるアマゾンからのプレッシャーも問題視されている。 こんな話をご存知だろうか。「マンションの宅配ロッカーを、アマゾンの配達を担う軽バン配達員がキープしている」という話だ。いわく、暗証番号式の宅配ロッカーについて、仲間内で暗証番号を共有することでキープしているというのだ。 アマゾンは、配達員に対しシビアな効率性を求める。不在持ち帰りが多いアマゾン配達員は評価が下がるし、歩合制報酬(注)で働くアマゾン配達員の場合は、収入も減ってしまう。これをを恐れる一部の不埒なアマゾン配達員が、宅配ロッカーをキープしているのだ。勝手に置き配されてしまうケースも、同様の理由と考えられる。 注) 軽バン配達員は「配送した荷物1つ当たり」の歩合制報酬で働いている人が多いが、最近ではAmazon Flexを含め時間制報酬の採用が増えている さらに言えば、アマゾン配達員は、不在持ち帰りの割合が基準を超えると、クビにされるという話も聞かれる。この話が本当なら、割合の基準も不明な中で、アマゾン配達員は目に見えぬプレッシャーを常に感じながら働かざるを得ない。 当然ながら、宅配ロッカーを不正にキープするというのは、非常識だし、倫理観に欠けた行為である。 だがこの背景には、軽バン配達員等に対するアマゾンの冷淡な態度や過剰なプレッシャーがあり、勝手な置き配や宅配ロッカーの占拠といったモラルハザード(倫理観の欠如)の温床となっているのだろう。アマゾン配達員によるユニオン系労働組合とアマゾン側の主張の応酬を見ていると、筆者の推測は間違っていないと思う。 アマゾンのこういった行動や態度は、どういった課題を引き起こすのか?