ケーキをイートインで。
小さい頃は何かのお祝いのときにしかケーキ屋さんに行かなかったけど、なんてことのない日にだって食べたいじゃん。大人になれば。それもお持ち帰りではなくて、買ったその場で。帰り道の箱の中の状況や、守れたことなんてない“お持ち帰りのお時間”に気を揉むこともなく、味も見た目もベストなままいただけるということがまず嬉しいし、ケーキをお店に食べに行くという予定の優雅さたるや。しかも、それが1,000円ちょっとで味わえてしまうのだ。 ケーキをお店に食べに行こう。 お持ち帰りでは味わえない豊かな時間が待っているから。
コンビニでだってチェーンのコーヒーショップでだってケーキは買えるし、一流パティスリーもデパ地下にある。その気楽さに何度もお世話になってきたけど、家で食べるどのケーキにも代え難い幸福感がそこにはあるんだヨ。東京にはイートインスペースを併設したケーキ屋さんが意外とあるし、本格派から“町ケーキ”まで、多種多様な空間ごと味わうって豊かな時間だと思わない?
内幸町のオフィス街。朝から賑わうケーキ店が『田村町木村屋』。ある日、足早に店に入ってきたスーツ姿の男性が、ショーケースを指さして「これとこれと、ブレンドで」と注文しながら席についた。わかる~、とついにやけちゃう魅惑のメニューが約25種のケーキから2個選べてドリンクが付く「ダブルケーキセット(¥1,210)」。2つも食べちゃう背徳感が至高……。口当たりの軽いバタークリームケーキや固めのプリンなどクラシックなメニューが並ぶ店の歴史もうんと長く、始まりは明治33年に『銀座木村家』から暖簾分けしたパン屋さんで、30年前からケーキをメインに据えた。店内に飾られた岡本太郎が描き下ろした作品や作家のサインを見ると、多くの文化人もこのスウィートな2個食いをしていたのではと想像も膨らむのである。
インフォメーション
TAMURACHO KIMURAYA 田村町木村屋 ◯東京都港区新橋1-18-19 ☎03·3591·1701 9:00~19:30 土・日・祝休