「全然同情してくれ」――騒がしい外野の声は濱田祐太郎には届かない
全然同情してくれ
2018年には、R-1グランプリで王者に輝く。出場者3795人の中の頂点。優勝の瞬間は、どこか他人事のようにとらえていた。
「優勝した瞬間は『あ、そうなんや』っていう。次の日、『めざましテレビ』とか『ノンストップ!』に出て、『あ、ほんまに優勝したんか。優勝してなかったらここには来てないんやな』っていう感じでしたね。賞金もほぼ使ってないです。1回パタークラブを『できるかな』と思って買いましたけど、全然できなかったんでそのまま捨てました」 ちょうど露出も増えてきた当時、芸風だった好き勝手なしゃべりに周囲からブレーキがかかるようになり荒んでいた濱田。R-1優勝の副賞だった冠番組『濱田祐太郎のした事ないこと!』での爆笑問題・太田光との対談が転機となった。「そんなこと(周囲からのブレーキ)気にしないでいい」と言われ、もやが晴れた。 太田は自身のラジオ番組で「芸人・濱田に白杖は必要ない、わざわざ白杖をもって舞台に立つのは同情を買うことになる」という趣旨の発言もしている。濱田に尋ねると迷いなく言い切った。
「同情するんなら全然同情してくれと思ってるんで。同情してるのは受け手が勝手にしてるだけなんでこっちには関係ない」 R-1優勝直後は否定的だった「視覚障がい者の代表扱い」についても飄々と語る。 「いまは『代表にするなら勝手にしてくれていいですけど、その責任はそっちでとれよ』ですね。こっちは好き勝手しゃべらしてもらってるんで、その責任は代表にしたあなたたちがとってくださいよって」 自身のYouTubeチャンネル上では雑談やネタに加えて、日々直面する視覚障がい者に対する偏見への思いを笑いなしで語る動画もアップするようになった。ぶつかっても点字ブロックの上からどこうとしない路上者、多様性を訴える立場の人間が芸人・濱田祐太郎の存在意義を否定する矛盾。動画には多くの共感や激励のコメントが寄せられている。 もっとも、シリアスな話題で共感を集めるほど芸人としては笑われづらくなるジレンマもある。濱田はどのように向き合っているのか。 「そのときしゃべりたいなって思うことをしゃべってるだけなんで。それで笑いづらくなろうが、微妙な気持ちになられようがあまり関係ないけどなっていう感じですね。真面目な話も別にそこまで真剣に考えてしゃべってないというか、真面目にしゃべってるギャグぐらいの感じです。『何こいつ真面目なことしゃべってんねん』みたいな。基本的に楽しんでもらおうと思ってしゃべってはいるんですけどね」