コーチングで子どもの主体的な学びを支える極意 トップダウンやティーチング→伴走型の支援へ
まずは「ペーシング」で信頼関係を構築
では、コーチングの手法は具体的にどのように教育現場に生かすことができるのだろうか。代表的なスキルとしては、「ペーシング」「承認」「聴く(傾聴)」「質問」「フィードバック」「提案」「要望」といったものが挙げられる。これらのスキルを基にした実際のコーチングについて簡単に説明しよう。 例えば、先生が子どもと関わる際に活用する場合は、「ペーシング」から始めるといいそうだ。声のトーンや顔の表情、会話のスピードや内容を合わせ、相手が使う言葉を繰り返したり、相づちを打ったりする手法だ。 「例えば、子どもから『最近元気がないんです』と言われれば、『そうか、元気ないんだね』と繰り返すようにして共通の土台をつくっていきます。ペーシングは、改めて1対1の時間を取らなくても普段の関わりの中で使える信頼関係構築スキルなので、忙しい先生でも活用しやすいと思います」 そして、単に子どもの言葉を「聞く」のではなく、子どもが本当に訴えたいことは何なのか、子どもの心は何に動かされているのか、しっかりと「傾聴」すること。また、「承認」も大事だという。 承認とは、価値判断が働きかける側にある「褒める」のとは異なり、事実を認めることだ。具体的には、「おはよう、元気?」(存在承認)、「早速試してみたんだね」(行動承認)、「目標を達成したんだね」(成果承認)、「半年前よりここができるようになったね」(成長承認)といったアプローチだ。他者からの価値基準で評価されるわけではなく、自分の変化を実感できるため、子どもの自己効力感を高めることができるという。 「そのうえで先生は、子どもに『提案』して触発していくことも必要でしょう」と木村氏は説明する。下図は、具体的なアプローチの一例だ。 「今、探究学習や自由進度学習など、自ら考えて進めていく学びや、子どもたちが自ら校則やルールを見直す活動などが少しずつ広がっていますが、学校の先生がそうした活動でも求められているのは、子ども本人の考えをたずねることだと思うのです。例えば『あなたは今それに関心があるんだね』『何が面白い?』『次はどうしようか』といった問いかけが必要ですが、それってまさにコーチングなんですよね。これからの子どもたちの学びや活動を支えるうえで、コーチングは活用できるスキルと言えます」