コーチングで子どもの主体的な学びを支える極意 トップダウンやティーチング→伴走型の支援へ
「強みを生かす教師教育」にも有効だ
もともとコーチングは「馬車」を指し、「大切な人をその人が望むところまで送り届ける」という意味で使われていたが、そこから「人の目標達成を支援する」という意味で使われるようになったという。その理論は、心理学者のアドラーやマズローなどを源流とする人間性心理学をはじめ、東洋哲学や構成主義、言語の研究などをルーツとしている。 コーチングをカウンセリングと捉える向きもあるが、木村氏は「歴史的に見れば祖先が同じ親戚みたいなものです。これは賛否が分かれる表現なのですが、カウンセリングはマイナスをゼロに戻していくことであり、コーチングはゼロをプラスにしていくと考えることもできます」と述べる。 これまで木村氏は、ベンチャー企業の経営層などのビジネスパーソンだけでなく、学校の教員や管理職、指導主事といった多くの教育関係者に対してもプロコーチとして伴走してきたが、「誰かに話を聞いてもらっていない人は多い」と感じるという。 「今の学校の先生方は本当に大変です。初任者研修はありますが、1人ひとりの先生に誰かが伴走する余裕はなく、校長先生や教頭先生も、迷ったときに相談する相手や場がなかなかありません。その結果、従来のトップダウンのマネジメントや『あれをしなさい』『これはダメ』といったティーチング的な関わりが再生産されてしまう。それにより、とくに若い先生が苦しくなって辞めてしまう現状もよくお聞きします」 一方のコーチングは、「相手の可能性を心から信じるというマインドセットから始まります」と木村氏は説明する。それがあるからこそ、相手は話したい気持ちになり、互いの信頼関係が生まれるのだ。 「そうしたマインドセットをベースに、相手が子どもたちなら、例えば、探究的な学びを行う中では、自分なりの正解を見つけることを促していく。管理職から部下の先生たちに対しても同様に、自己選択や自己決定を促していく。今の時代、先生がどういう教育をしたいのか、どう子どもたちと関わりたいのかを自覚する必要があると思いますので、先生方の強みを生かす教師教育を行うという観点からもコーチングは有効だと思います。また、先生方は日頃から自分の話を聞いてもらっていれば、子どもたちの話も聞けるようになるはずです」