コーチングで子どもの主体的な学びを支える極意 トップダウンやティーチング→伴走型の支援へ
コーチングを学ぶ際の注意点
一方、校長や教頭などの管理職が教員に関わるとき、あるいは指導担当の教員が若手教員に関わるときなどにも、ペーシングや傾聴、承認といったスキルは有効だという。 「加えて、『質問』も大事になってきます。イエスかノーかで答えられるようなクローズクエスチョンではなく、本人が自分の言葉で答えられるようなオープンクエスチョンが必要になってきます。例えば『今どんな感じ?』『どうなると理想なの?』などです。そのような質問により、同僚を誘導して答えを導くのではなく、本人の思いを尊重しながら関わっていくほうが、本人に主体的な変化を促し、それを持続させることもできるのです。また、企業も学校も、うまく回っている職場は聞き合う文化があるので、同僚同士が1対1でコーチングを行う『ピアコーチング』もお勧めです」 例えば下図は、指導担当者と初任者が授業の振り返りをしている場面だ。質問イメージの参考にしてほしい。 教員は、コーチングをどのような形で学べばよいのだろうか。中には悪徳なコーチングビジネスも存在するようなので、気をつけるべき点もある。 「まずは自分がなぜコーチングを学ぶのかをしっかりと考えること。児童生徒によりよく関わるスキルとして学びたいのか。あるいは、副業や将来の独立のためなのか。後者ならば信頼できるコーチングスクールに通ったほうがいいでしょうし、前者ならばスクールは高額なので書籍で構いません」 書籍は、コーチ・エィ著『この1冊ですべてわかる 新版コーチングの基本』(日本実業出版社)、あるいはヘンリー・キムジーハウス他著『コーチング・バイブル(第4版) 人の潜在力を引き出す協働的コミュニケーション』(東洋経済新報社)、ジョセフ・オコナー他著『コーチングのすべて――その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで』(英治出版)がお勧めだという。スクールは、国際コーチング連盟に認定されている「CTI JAPAN」、あるいは「コーチ・エィ アカデミア」や「THE COACH ICP」などに通えば、国際資格が取りやすくなるという。 また、教員が学校現場でコーチングを生かしたい場合には、自分が信頼できる人のコーチングを受けてみるとよいと木村氏はアドバイスする。 「自身が伴走してもらう体験を持つことで、理論と実体験を結び付けて学びやすくなります。コーチの見極め方としては、一定の研鑽を積んだことがわかる資格として、国際コーチング連盟(ICF)や欧州メンタリング&コーチング協議会(EMCC)の認定を受けているかどうかを確認することをお勧めします」 (文:國貞文隆、注記のない写真:木村彰宏氏提供)
東洋経済education × ICT編集部