新規1年目の売上1000万円超――支援制度が充実、宮崎で農業に挑む移住者たち
ストレスのない暮らし
笈田貴之さん(52)は50歳を過ぎた昨年4月に家族4人で川南町に移住し、夫婦で研修生になった。それまでは大阪で住宅設備の仕事を自営でやっていたが、多忙とプレッシャーから心身ともに疲弊していたという。 もともと10年くらい前から、GWや正月休みには宮崎に来て趣味のサーフィンを楽しんでおり、「いつかはこっちに住みたい」と考えていた。 「住宅設備の仕事をいつまでも続けられるとは思えず、新しいことをやるなら今しかないと考えました。それに新型コロナの流行で子どもたちも満足に出かけられない状況になった。だったら、自然あふれる宮崎で暮らしたいと思ったんです」 実際に川南町に来てみると、「先輩研修生の顔がみんな生き生きしていた」ことに感激し、即決した。ストレスのない暮らしに「価値観が変わった」と爽やかな表情で語る。
研修生を経てピーマン農家になった新規就農者は既に8人いる。川南町には、今年も新たに4組6人の研修生がやってくる。移住、そして新規就農する人たちの動機はさまざまだ。しかし、「環境を変えたい」という思いは共通している。 一方で、町には「若い世代の人口を増やしたい」という思いがあり、農業の「担い手不足」という問題もある。川南町に人が集まっている現実は、そんな社会課題を解決するヒントを示している。
------ 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している。https://ogawa-masanori.com