新規1年目の売上1000万円超――支援制度が充実、宮崎で農業に挑む移住者たち
土地とビニールハウスを入手しやすく
川南町の新規就農支援制度では、農地取得とビニールハウス設置も支援している。農地の購入とビニールハウスの整備は農業法人の「アグリトピアおすず」が行っている。それに対して国の補助事業を活用しつつ、町とJAが補助して金銭的な負担を分散している。農地は無償で貸し出し、一棟(10アール)2千万円以上かかるビニールハウスは、新規就農者に15年リースで借し出している。リース料を払い終えると所有できる仕組みだ。 アグリトピアおすずの西村佳之専務は、「新規就農者の投資リスクを最大限抑える仕組みになっている」と説明する。 ともに宮崎市出身で、東京で会社員をしていた佐師輝洋さん(31)・香恋さん(32)夫妻は、昨年から研修生になった。農業を始めるにあたり川南町以外の場所も調べたが、新規で農地を手に入れるのは至難の業で、さらにビニールハウスに何千万円もの初期投資をするのは不可能だったという。 「ここでなければ農業をやることはまずできなかったと思います」と制度のありがたみを語る。
町のみんなが移住者を歓迎
ただ、移住は農業や収入がすべてではない。地元住民に受け入れられるかも重要だ。農業を目的に移住した人たちは口々に、「町のみんなが歓迎してくれた」と笑顔で語る。 日高昭彦町長は「ここは開拓の町だからです。チャレンジャーで独立心を持つ『川南気質』なんです」と熱っぽく語る。川南町は青森県十和田市、福島県矢吹町とともに「日本三大開拓地」と称される。 「ここは昭和15(1940)年には人口1万人程度の町でした。それが戦後に1万8千人まで増え、近年1万5千人まで減りました。問題は人口減少ではなく、人口構成が悪くなることです。だから移住者を募っているわけですが、最初は『支援が手厚いから川南に来た』というので構いません。しかし、最終的には『農業で生き残るんだ』『自分で道を切り開くんだ』という開拓者スピリットを持った人が増えてほしいと思っています」