新規1年目の売上1000万円超――支援制度が充実、宮崎で農業に挑む移住者たち
移住者が集まる町の支援策
川南町は人口1万5千人ほどの小さな町だ。農業だけでなく、漁業も盛んでサーフィンの人気スポットとしても知られている。 過疎化が進む中で、町がまず取り組んだのは、移住者への生活支援制度だった。 「人口を増やすには、若い世代の夫婦が川南町に来て子どもを育ててくれるのが一番です。そのため、2013年から移住促進に力を入れ始め、家賃補助や生活助成はもちろん、家を購入・建築する場合には最大100万円を支給するなどしています」 川南町産業推進課の阿久根浩史係長はそう説明する。 効果はすぐに表れた。町に移住する人は2006年からの10年間で11世帯だったが、2016年からの5年間は104世帯まで増えた。移住者の仕事先は、病院や食品工場、飲食店など様々だ。
続いて町は、農業にチャレンジする人を増やす取り組みを始めた。 農林業センサスによると、2020年の全国の基幹的農業従事者は約136万人で、2010年の205万人から3割以上も減った。しかも136万人の約8割が60歳以上だ。 川南町は野菜の中でも、ピーマンの栽培を呼びかけた。
農業初心者を指導する支援体制
ピーマン生産者の網代宗章さんは言う。 「川南町では2010年頃から低農薬で窒素肥料も減らす栽培法で作る『さららピーマン』というブランドを『コープ東北』を中心に東北地方に出荷しています。当時の収穫量は350トンでしたが、その後需要は1000トンに増えました。でも、ピーマン農家は10人程度しかおらず、既存の農家でピーマン栽培をやってくれるところもなかった。そこで、新しく就農者を募ろうと考えたんです」
2018年、ピーマン農家になるための新規就農支援制度がスタートした。 「さららピーマン」は売り上げの面からも新規就農者に最適だと網代さんは語る。 「販路がしっかり確保されているため、収穫前に週ごとの価格を決め、出荷量の6割はその価格で出すことができます。残る4割は市場価格に基づき変動する価格ですが、6割で安定的な収益を確保できることが経営的に大きいのです」 この研修制度では、町が地元のJA、生産者、民間企業と連携して研修生に指導する体制をとっている。生産者は土をどうつくり、苗をいつ植え、どう育成するかといった栽培法を教え、研修生は実際にピーマンを育てる。JAと民間企業はどのように出荷して経営を成り立たせるかといった営農に関する知識を提供する。 研修の2年間で必要な技術と知識を習得させ、3年目から新規就農者として独り立ちできるようにする方式だ。JA尾鈴・営農指導課の角田正樹係長は言う。 「みな初心者ですが、何も知らないからこそ、教えたことをしっかり吸収していくという良さがあります。成長の鍵は素直さだと感じます」