新規1年目の売上1000万円超――支援制度が充実、宮崎で農業に挑む移住者たち
前出の保坂夫妻はこの制度の1期生だ。研修中は、就農者の半分程度の面積でピーマンの栽培を行う。ただし、収穫で出た利益は研修制度の運営資金に回るため、研修生の収入はない。そのため、国の新規就農支援制度を活用する。 農林水産省は2012年から、一定の基準を満たした研修プログラムを受けている研修生に対して、就農準備支援金として年間150万円を支給している。期間は2年間で、川南町からは別途家賃補助が毎月5万~7万5千円支給されるため、生活していくことができる。 保坂夫妻は研修を終えた2020年7月から新規就農者となった。新規就農者にも国の支援があり、一定の条件を満たした人には「経営開始資金」として年間最大150万円支給してくれる(旧制度では5年間、今年度からの新制度では3年間)。
ハウス二棟で売り上げ1000万円を目標に
兵庫県出身で3期生の箕浦和広さん(29)も、こうした就農支援の手厚さに惹かれて川南町にやってきた一人だ。5年ほど前、オーストラリアでのワーキングホリデーで、イチゴ農家の収穫作業をした経験をもつ。 「(本格的な)農業経験はなかったけれど、興味はありました。オーストラリアでは海が身近にあって、暇さえあれば趣味のサーフィンができ、自由で健康的な生活をしていました。日本でもそうした環境を探す中で、宮崎県が候補になりました」
川南町の研修制度を知り、がぜん興味が湧いた。ピーマン営農での収支試算をしっかり提示していることが、決め手の一つになった。 ピーマン栽培における10アール(ビニールハウス一棟分)当たりの収穫量の基準は13トン。過去の実績から平均350円/キロの単価で、売り上げは455万円になる。経費は種苗や肥料、重油代など223万円で、差し引きの所得は232万円。夫婦二人、20アールで売り上げ1000万円程度を目安としている。 この試算は絵空事ではなく、保坂さん夫妻(20アール)の初年度は1000万円を超える売り上げだった。 箕浦さんは7月末で研修を終え、8月から新規就農者となる。栽培はもちろん、空いた時間にサーフィンができることにも魅力を感じている。 「収穫は6月上旬に終わり、次のシーズンは9月から植え付けが始まります。夏の2~3カ月間は自由に過ごすことができるんです。旅行もできるし、副業もできる。すごく可能性がある仕事だと思います」