「なによりお金が大事」の思考が本末転倒な訳、「どう稼ぐか」より「なぜ稼げるか」を考える
減少する生産年齢人口、まずは働く人へのリスペクトを
髙宮:お金の価値観が変化するとともに、子どもの仕事に対する価値観も変わっています。最近は、YouTubeなどで知った給料の低い職業に対して、「こうはなりたくない」と考える高校生などが増えていて、これはよくないなと思いますね。 田内:高齢化社会の進行もあり、10年後20年後にはいろいろなところで人手不足が起こると予想されます。そもそも人が少ないので、単純に給料を上げれば増えるというわけでもないでしょう。将来、例えばドライバーが足りずに交通手段が減ったときに、今までいろいろな人が働いてくれていたことのありがたみを知るはずです。昨今は、搾取構造の中でカスハラも問題視されるようになり、全体的に働く人への感謝が足りていない気がします。人手不足の一因には、利用者側の問題もあるのでしょう。 髙宮:「闇バイト」も、仕事に対するこうした価値観の延長かもしれませんね。「楽に稼げるならそれでいい」という感覚がありそうです。 田内:知らない人でも、「同じ社会を生きている一員」と思えば、だましたり襲ったりできないはずですよね。身内以外は敵、のように見えてしまっているのかもしれません。「闇バイト」がどれだけ報道されていても、SNSの偏った情報ばかり見ていると気づけないのだと思います。相談する相手がいないことや、現代の格差社会も拍車をかけていると思います。 髙宮:田内さんの話を聞いて、改めて、働くうえでは人の役に立つことが大切だと感じました。私の会社でも、子どもたちに喜んでもらいたくて働いている人が多いですね。 田内:これからの子どもたちは、親世代が知っている働き方はしないでしょう。40年後には生産年齢人口が4割減るといわれていますから、今と同じ仕事を続けるのも難しくなります。しかし、これはきっとチャンスでもあって、自分に何ができるか、もう一度考える機会になると思います。子どもたちは可能性のかたまりです。親が子どもを心配する気持ちはよくわかりますが、子どもたちは私たち大人ができる以上のことを知っているはずです。子どもの考え方や生き方をぜひ尊重してあげてほしいです。 髙宮:今の子どもたちは、自分が本当にやりたいことではなく、外からの見え方を意識して価値判断をする傾向があると感じます。やはりSNSの影響が大きいのだと思いますが、保護者の皆さんには一言、「人の目は気にしなくていいんだよ」と背中を押してあげてほしいですね。 田内:自分の価値の物差しは、他人の中にあるのではなく、自分の中にだけ存在するものですからね。 →前の記事を読む:【対談前編】これからは"社会のため"を考えられる子どもにチャンスが来る (文:酒井明子 編集部 田堂友香子、撮影:梅谷秀司)
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