「1日200件の電話かけ」自民と蜜月20年以上も、自主投票へ…衆院選で旧統一教会信者の動きに変化 宗教団体それぞれの思惑
10月27日投開票の衆院選を巡り、新潟県内の宗教団体の支持動向に注目が集まっている。安倍晋三元首相が銃撃されたことを発端に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との「蜜月」関係が露呈。高額献金などが社会問題化した旧統一教会はこれまでも国政選挙で、各政党や個別候補の選挙活動を支援してきた。立正佼成会、創価学会を含め、今衆院選での県内宗教団体の動きを探った。 【地図】新潟県の小選挙区の新旧区割り 「かれこれ自民党とうちの友好関係は55年。私ももう二十数年間の付き合い」。県内の旧統一教会関連団体の関係者はこれまで、自民の候補を中心に各選挙で手伝ってきたという。 具体的には、特定候補への支援を呼びかける「電話かけ」を組織的に展開。陣営の人が1日に100件かけるとすれば「うちはお菓子も食べず、飲み物を飲むこともせず、一人で黙々と200件かける」とし、勝敗を決する1票を掘り起こしてきたと自負する。 だが、安倍元首相の銃撃事件後、状況が一変した。 旧統一教会と自民議員の接点が相次いで判明したことを受け、自民は社会的問題が懸念される団体について、活動を助長する行動を慎む方針を記した「ガバナンスコード」を公表。さらに文部科学省は2023年10月、教団への解散命令を東京地裁に請求した。 「今回はもうはっきり言えば自主投票です。選挙区も比例区も自主投票」。選挙戦序盤、旧統一教会関連団体の関係者は、今衆院選では特定政党や候補への組織を挙げた応援はしないと明言した。 だが、今も自主的に応援を申し出る会員はいる。ある自民関係者は「今回も電話かけをさせてほしいという人が来た。もちろん断った」と声を潜めた。県内の旧統一教会の信者は2000~3000人とされている。先述の関係者は「選挙権は国民の権利。会員には投票には行こうと言っている」と話した。 立正佼成会は県内にある10教会の多くが立憲民主党の候補を推薦する。ただ「会として党そのものを推薦するわけではない」(立正佼成会の県内政治担当者)とし、候補の人物像などを踏まえ、教会ごとの判断で推薦の可否を決めている。 立正佼成会の会員数は県内に4万世帯程度とされる。近年の国政選挙では平和主義を推進する観点などから野党候補を推薦する傾向にあり、電話かけなど裏方の支援で各候補を支えている。 今回は3区内にある教会で、推薦する候補が立民と自民に割れている。立正佼成会の政治担当者は「一党一派に属さないので、その時々で適切な人材を応援する。(本部も)それぞれの教会の判断を尊重している」と説明する。 公明党最大の支持母体「創価学会」は自民との連立政権の枠組みを重視する。県内5小選挙区に公明の候補はいないため、会員には自民候補への投票を求めている。 ただ、選挙戦序盤の動きは鈍かったとの声もある。支援する自民は派閥の裏金事件で揺れた。選挙運動の主軸となる創価学会女性部は「政治とカネ」やスキャンダルに対する反発が強いとされ、当初は自民候補を敬遠する向きがあった。創価学会内には「自民は応援を求めるだけ。比例票への協力が見えない」との不満もくすぶる。公明は北陸信越ブロックの現有1議席死守が最重要課題で、自民の対応を注視する。 選挙戦が中盤から終盤に入り、劣勢の自民候補が「比例は公明党に」と訴えるにつれて、動きがまとまってきた。前回2021年衆院選では県内で10万票近くを集めたとされる創価学会。今選挙でも自民候補の勝敗に影響を与えそうだ。