森林出現が環境を破壊?デボン紀生物大絶滅―「最古の木」の化石探求(下)
そして私はデボン紀の植物 ── 特に最古の木の化石 ── を、アメリカ南東部で探し続けている。(注:ニューヨーク州やペンシルバニア州からは、前回紹介したようにたくさんのアーケオプテリスが知られている。しかし、北米の南部一帯からはほとんど報告されていない。)ここアラバマ州のデボン紀後期の地層において、「はっきり木の化石」と断定できるものは今のところ見つけたことがない。 しかし、(扉の写真でお見せした)木の化石を、今年の春、すぐ隣のテネシー州で発見することができた。地層はデボン紀後期 ── 約3億6000万年前の泥岩層だ。アラバマと同じような海成堆積層(15メート弱の厚さの地層だ)の中、2、3の限られた地層のレベルにおいて、かなりの数の(写真のような)大きな木の幹や枝の化石が見つかった。おそらく、嵐や台風のような悪天候の後、まとめて陸地から沖へと流されてきたのだろう。 一連の、私のデボン紀(そして石炭紀)の木の化石探索における経験から、一つ気づいた点がある。 「木の化石は見つかるときはたくさんみつかる」 ── ケチャップやサッカーのゴールが、時にどかどか出ることがあるように(サッカー選手がこのような面白い表現を少し前にしていた)。しかし、木の破片の化石が一つだけ、ぽつんと隠れるように地層の中に埋もれている光景は(あまり)見たことがない。 木という生き物は、デボン紀後期の出現当時から、多数の個体と群れて生きる道を選択していたのではないだろうか? 多数の個体と一緒でないと繁殖できないのかもしれない。もしかすると木の出現は、森林の出現と「ほぼ同じこと」なのではないだろうか? それでは、デボン紀後期に樹木はどのように分布範囲を広げていったのだろうか? 初めは非常に限られた地域でほそぼそと生息し、徐々にあちこちに散らばっていったのか? それとも生物史に登場したその直後から、我が物顔で世界進出をはたしたのだろうか?