地元記者もリスペクト…サッカー海外組日本人選手のお手本となった会見 元日本代表FWが称賛「誇らしい」【現地発コラム】
ドイツ語でやり切った引退会見、盟友・岡崎慎司も指摘「長谷部さんにしかできない」
元日本代表キャプテンの長谷部誠はドイツ語を流暢に操ることで有名だ。 30分超の引退表明記者会見では、通訳を付けずにすべてドイツ語でやり切ったことが評判になった。普段からチームメイトや監督・コーチ、スタッフとドイツ語でコミュニケーションを取っているのだから、記者会見に通訳を付けなくても驚きではないと思われる人もいるのかもしれない。 【動画】「涙腺崩壊」「泣ける」と反響 長谷部誠、我が子と抱擁交わした感動の名場面 その点で、元日本代表FW岡崎慎司の指摘が興味深い。 「いやぁ凄いっすね。ちゃんと喋れるならやったほうがいいですよね、ああいうのは。でも普通にプライベートで喋るのと違って、公の場で話すのはいろいろと難しい。やれたら自分もやりたいんですけど、普通の人は多分できないじゃないですか。長谷部さんにしかできない」 オフィシャルの場で発した言葉はそのままメディアを通じて広がっていく。プライベートであれば、自分の意図するように思いが伝わらないと思ったらその場ですぐ修正することもできるが、それができない。意図しない表現で解釈され、それがそのまま文字ベースや音声ベースでアップされると、思いもよらぬ余波が起きたりする。まして昨今はSNSでの拡散性も極めて高い。それだけに1つ1つの言葉や表現に確かな確信を持てなければ、オフィシャルの場で現地の言葉を話すのはリスクも伴う。 長谷部のドイツ語はとても丁寧に響く。それは誤った表現や言葉を使わないように気を配っていることの表れでもあると思う。使い慣れたサッカー用語や表現はとても滑らかに話すのだから、もう少し早く喋ることもおそらくできる。 このあたりは日本語での表現力からも感じられるものがある。頭の中で整理してから言葉を並べていくタイプと、言葉を並べ続けながら頭の中を整理していくタイプがあると思われるが、長谷部は前者に属するだろう。 日本語での発言も曖昧な表現は少ない。外国語は母国語力が高くないと上手くいかないというのは海外における定説ではあるが、長谷部のコミュニケーションを見ているとその関連性に頷けるものがある。 ましてドイツ語は習得が難しい言語だ。メディアでは、少しのやり取りができるだけで「言語をマスター」と書いたりする。だが実際は、そんな簡単にマスターなどできない。ことドイツ語に関して言えば、ゲルマン語圏以外の国から来た人がある程度スムーズにドイツ語を話せるようになるまで5年かかると言われている。 ちなみに筆者の場合だと「ドイツ語で考えてドイツ語がスムーズに出てくる」と実感したのが7年目。もちろんこれには個人差があり、もっと早くに習得する人もいれば、もっと時間が必要な人もいるし、速ければいいとか遅いからダメとかいうものでもない。 いずれにしてもそうした壁を乗り越えて、あの場にドイツ語で臨んだのだ。