【英国F1レポーターが角田裕毅を分析】角田を起用しなかったのは、レッドブルにとっては大きな損失……でもRBにとっては最大の利益だ!
今季大躍進を遂げている角田裕毅。レッドブル昇格待望論もあったが、結局は来季もRBにとどまることになった。しかしこのことは、RBにとって大きな利益になるかもしれない。 【ギャラリー:美しきF1マシン】「最も悔しい、日本人の日本GP”4位”」B.A.R.ホンダ006 2021年に20歳という若さでF1デビューを果たした角田。しかし当初は、速いが不安定、そして短気なドライバーという評価だった。彼の無線の発言は罵るような言葉が多く、それはそれで話題となった。 とはいえ、遅いドライバーを速くするよりも、速いドライバーを落ち着かせる方がよっぽど簡単だというのは、昔からモータースポーツの世界では散々言われ続けてきたことである。そのためチーム、そして角田を若い頃から育ててきたホンダは、彼がバランスの取れたレーシングドライバーに成長するのを支え続けた。 その結果2023年には、競争力の乏しいマシンを走らせるしかなかったものの、キャリア最高のシーズンを過ごした。マシンの戦闘力が向上したシーズン終盤には、ラップリードを記録したり、ファステストラップを獲ったり、あるいはドライバー・オブ・ザ・デイに選ばれたりと、輝きを見せた。 この2023年限りで同チームの代表を退くことになったフランツ・トストは常々、「若いドライバーが今のF1に適切に適応するには、3シーズン必要だ」と言ってきたが、それが正しかったことを証明したのだ。 2024年、前年までアルファタウリと呼ばれていたチームは、RBと名称が変更。そして角田は、F1通算8勝とはるかに経験豊富なチームメイト、ダニエル・リカルドでさえ追いつけないレベルにたどり着いたようだ。 2024年の角田は、開幕直後から安定して予選Q3に進出。カナダGPまでの9戦で5回の入賞を果たしている。カナダではコンディションがウエットからドライへと変わっていくなかでコースアウトし入賞を逃すことになったが、今ではそのミスも逆に「珍しいこと」だとみなされるほどになった。 しかしパフォーマンスのレベルが明らかに向上しているにもかかわらず、レッドブルは角田を昇格させようとはしなかった。セルジオ・ペレスが優れた走りを見せられなかった場合の交代要員は、角田の成績に明らかに劣っているリカルドであるとされ、RBに加入させたのもそのためであった。 そしてレッドブルは実際に、ペレスとの契約を2年延長させた。しかしペレスはここ数戦大苦戦。イモラ、モナコ、カナダと後方を走るレースが続き、今ではドライバーズランキング5番手に後退してしまっているにも関わらずだ。これを考えると、角田のキャリアは、彼の手に負えない理由で停滞してしまっていると言える。