核のごみ処分地選定:自治体の手上げ方式は「限界」の声。国内初、北海道で文献調査の報告書
脱膠着へ専門家も「対応を」
複数の専門家も、現行制度の限界を指摘し、新たな仕組みの構築を急ぐよう求める。 国の原子力委員会の元委員長代理で、長崎大学の鈴木達治郎教授(原子力工学)は、「核のごみの処分地は原発の将来に関わらず必ずどこかに探さなくてはならず、寿都、神恵内、玄海の3町村での調査は意義があること」とする一方、「地方自治体の手上げで処分地を探す方式は、小さな自治体の首長への負担が重すぎる」と指摘。その上で、原発政策に中立的な機関が50~100カ所の候補地を選んで、自治体に申し込んで十分な議論を踏まえつつ適地を絞っていく方式など、新たな選定方式を提言する。 日本学術会議で核のごみ問題についての提言をまとめた東京工業大学の今田高俊名誉教授(社会システム論)は、核のごみの危険性が無くなる10万年先をイメージした議論の必要性を指摘。「将来世代が過去を振り返った時に今の議論をどう思うのかを考えるべきだ。小さな地域の議論に任せたり、発電事業者が説明や説得をして進めたりするのではなく、国、事業者、第三者による国民的な議論の場をつくって、方向を決めてほしい」と語る。 ※クレジット無しの写真は筆者撮影
【Profile】
松本 創一 ニッポンドットコム編集部チーフエディター。慶応大学文学部卒。北海道新聞に23年間在籍し、冬季五輪、ソウル支局、道庁、札幌市役所、北方領土を抱える根室支局などを担当した。2024年4月から現職。趣味は観劇、街歩き。