核のごみ処分地選定:自治体の手上げ方式は「限界」の声。国内初、北海道で文献調査の報告書
「調査は必要。他の地域に広がらず残念」
神恵内村には調査に反対する村民が少なく、対立は目立たない。高橋村長は報告書発表前の取材に「原発に隣接する地域として、核のごみを受け入れる適地かどうか、まず調査が必要だ。しっかり調査し、受け入れの是非を将来世代が判断できる状態にしておきたい」と語った。ただ、他地域に調査を受け入れる自治体が広がらない現状には、「残念だ。国がある程度適地を絞って、そこで議論をスタートしなければ、議論は進まないのではないか」と、片岡町長と同様に制度の限界も口にした。 調査は、地元自治体または知事が反対すれば、次の段階には進まない。
北海道の鈴木知事は報告書公開を受け、22日の記者会見で「概要調査に移行しようとする場合には、現時点で反対の意見を述べる」と改めて発言した。ただ、最終的な表明には、道議会などの意見も踏まえる考えも示すなどあいまいさを残しているものの、道はNUMOに対し全道、全国で核のごみの処分に関する説明会を求めるなど厳しい態度を示し続けている。道庁関係者は「今の制度を続けても、広域的な面から判断する知事は前向きになりにくい。それは北海道だけではなく他の地域でも同じはず。別のやり方が必要だ」と現制度に批判的だ。 寿都町の周辺地層には断層帯が横たわり、神恵内村の近くには火山がある。一帯にはもろくて崩れやすい岩石も分布し、核のごみの処分地には向いていないという専門家の指摘も少なくない。
先進地フィンランドは
核のゴミの処分地問題で最も先行する国は、フィンランドだ。NUMOの資料などによると、原子力企業が、全国約100カ所を調査候補地域として選定したうえで調査に応じる自治体を募った。2000年に南西部のオルキルオト島の最終処分場(オンカロ)の活用が決まり、20年代半ばの操業開始を目指し整備が進む。地元住民には積極的な情報開示や、小規模な対話集会を繰り返し、最終的には地元住民の多くが受け入れに賛成したという。
日本全国の原発の使用済み核燃料は計1万9000トン。再処理の過程で出る廃液をガラスと混ぜて固めた「ガラス固化体」は2530本。再処理していない廃棄物を含めるとガラス固化体は2万7000本相当ある。国が計画する最終処分施設では、4万本以上を処分する想定だ。 日本のかつての計画では、33~37年ごろには最終処分を開始するとしたが、現段階では全く見通せていない。